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消費者ローン現在利用者の時系列変化に関する分析

堂下 浩 東京情報大学
内田 治 東京情報大学

2006年12月、「多重債務」対策を目的とする貸金3法(貸金業法・利息制限法・出資法)が国会を通過した。本調査では法改正に伴う消費者金融市場における変遷を、主として資金需要者の側から分析した。

先ず、2007年と2008年における消費者金融の現在利用者プロフィールを比較する。法改正により、貸金業者が審査基準を高めたことで、「派遣社員」、「パート/アルバイト」、「自営業」といった収入の不安定な職業の利用者が市場から閉め出され、同時に個人年収及び世帯年収の低い利用者、預貯金額の低い利用者も市場から閉め出されたことが分かった。

次に、過去一年間におけるヤミ金融との接触状況を2007年と2008年の調査から比較した。その結果、ヤミ金融との「接触あり」の割合が11.1%で1.0ポイントの増加となった。そこで、2007年と2008年における消費者金融の申込者によるヤミ金融との接触率を、申込結果別に2つのグループに分類して比較した。「希望通りの借入を受けることのできた」グループによる接触率は横這いであるのに対して、「希望通りに借りられない対応を受けた」グループによるヤミ金融との接触率は30.1%から34.4%に上昇した。特に、「医療費」、「子供の教育費」、「冠婚葬祭費」、「事業資金の補填目的」で申し込んで拒絶された利用者では、「ヤミ金融からの借入」の割合が高い点も示された。

さらに、貸金の利用実態を知るために零細事業者にアンケート調査を行った。アンケート調査より、零細事業者では消費者金融やクレジットカードが経常的資金とつなぎ資金の両面において広く利用されている点が分かった。同時に、消費者金融を利用する零細事業者は業況感において一般の中小企業と大差ないものの、資金繰りで極めて厳しい状況にあることが示された。

→英語バージョン

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