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改正貸金業法と日本のGDP

加藤 晃
北海道教育大学

飯田 隆雄
札幌大学

2006年12月13日に国会を通過し、20日に公布された「貸金業法等一部改正法 付則第67条」(以下「改正貸金業法」と呼ぶ)、この法改正の要点は、1.上限金利を29.2%から20%に引き下げる「上限金利の引き下げ」、2.審査時に源泉徴収票等の提出を義務付け、年収の3分の1を超える貸し付けを禁止する(総量規制)「借り過ぎや貸し過ぎの未然防止策の導入」、3.政府の指定した信用情報機関が利用者の債務状況を一元管理する、4.貸金業者となるためのハードルを純資産5千万円に引き上げ、テレビコマーシャルの内容や頻度について厳しい規制ルールを作り、生命保険契約を禁止した「貸金業者の業務を適正に行わせるための様々な規制」、5.貸金業法43(みなし弁済規定)の廃止、である。

特に、今回改正された上限金利規制に関しては、出資法の年率金利上限を29.2%から20%に引き下げる。10万円までは年利20%、100万円までは年利18%、それ以上は年利15%とする。また、なおも残された範囲は新たな行政罰で対処し、二元的上限金利問題を一応解消する努力がなされた。

今回の法改正の要点は、1.上限金利を29.2%から15-20%に引き下げる、2.特定の業者から50万円以上、複数の業者から100万円以上融資を受ける場合においては、融資審査にあたって源泉徴収票など収入証明書類の提出を義務付けたうえ、原則として年収の3分の1を超える貸し付けを禁止する(総量規制)――の2点である。

そこで、この上限金利規制と、総量規制を定額給付金給付の政策と比較しながら、全国、二次産業の多い大阪府、一次産業の多い北海道について、産業連関表を利用した経済波及効果・雇用効果のシミュレーションを通して、貸金業の規制の効果が実体経済に多大なマイナスの影響を及ぼすことを明らかにする。

その結果は以下のようにまとめることができる。

1.上限金利規制と総量規制の効果

日本全体の上限金利の影響は名目GDP成長率で換算すると、2006年度マイナス0.22%、2007年度マイナス0.49%、2008年度マイナス0.45%となる。経済の落ち込みに対する新規失業者数は2006年度約15万人、2007年度約34万人、2008年度約32万人である。総量規制の影響では0.38%名目GDPを押し下げ、約23万人の失業者を排出する。

北海道における上限金利規制の影響は、2006年以降2008年まで名目GDPベースで毎年平均0.24%も景気を引き下げ、失業者もこの間の累計が約2.9万人に達するマイナス効果があった。大阪府では上限金利規制の影響は、2006年以降2008年まで名目GDPベースで毎年平均0.27%も景気を引き下げ、失業者もこの間の累計が約3.8万人に達するマイナス効果があった。

2. 定額給付金の効果

定額給付金の給付における消費性向が63%の時、日本全体では0.31%名目GDPを押し上げ、新規雇用者を約19万人創出した。北海道では0.3%の景気を高め、雇用効果は7,695人となる。大阪府では0.2%しか景気を引き上げず、新規雇用も8,440人となり、2008年度の名目GDP約18兆円の北海道に比べて約2倍、約38兆円の名目GDPである大阪府の新規雇用に対する影響は小さい経済規模に留まっている。また、これは一度限りの最終消費拡大政策である。費用対効果の充分な検討が必要と思われる。(表5・6・7参照)

3.結果

上記政策が財政金融政策の一部と考えるならば、低成長率下の財政再建中の政府が、少なくとも、貸金業産業を潰してしまい、それに関わる多くの産業や個人を経済的に追いつめ、経済・財政に寄与できることを排除した形となった.また、一過性のバラマキは財政赤字を拡大したことになる。

 

→英語バージョン

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