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準双曲割引と自制問題

晝間 文彦
早稲田大学

長期的な報酬(効用)を犠牲にして、目前の報酬を衝動的に選んでしまうという行動は時間不整合的行動と呼ばれるが、この衝動的行動は個人レベルだけでなく、社会レベルでも経済コスト的に見て大きな問題である。本稿では、標準的経済学では説明困難な行動を「準双曲割引」モデルで説明して、そうした行動を抑制する手段としての自制を取り上げている。準双曲割引モデルでは、規制する自己と規制される自己という2つの自己を想定することが自然であるが、それは認知心理学での「2重過程理論」と整合的である。本稿では、前者が後者を規制する程度を自制力ととらえ、Frederick(2005) らの研究を援用して、認知能力およびパーソナリティを自制力の代理変数として、それらと時間割引率との関係を、アンケート調査データを用いて検証した。その主要な結果は、パーソナリティは有効でなかったが、認知能力は、時間割引率と有意な負の関係を持つことが確認された。これは高い認知能力は時間割引率を低める(すなわち、現在重視型でなく、将来重視型となる)こと、すなわち自制力の有効性を示唆している。最後に今後の議論への足掛かりとして、この結果が、2重過程理論に基づく自制力という視点の他に、脳を情報処理機能のネットワークとする単一過程理論でも説明可能であるという議論にも言及している。

→英語バージョン

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