PSRI 早稲田大学パブリックサービス研究所
活動内容
■2016年度
自治体版MD&A
(経営者による財政状態および経営成績の検討と分析)
試作実例集

 当研究所が主催する公会計改革推進プログラムは、自治体における公会計の改革・推進を図るべく様々な研究活動、研究成果の普及活動を行っている。その活動を担う公会計改革推進研究会は、2010年以降、わが国おいて公会計情報をいかに行政経営に活用していくかという問題意識に基づいて研究活動を行なってきた。そして、2016年度においては、行政のみならず議会や住民などの重要なステークホルダーが自治体経営の現状を理解することが、改革への取組の第一歩だという観点に基づき、「自治体版MD&A(Management Discussion and Analysis:経営者による財政状態および経営成績の検討と分析)」のあり方をテーマとして研究を行った。
 本資料は、2016年度研究部会において参加自治体が作成した「自治体版MD&A」の試作例であり、自治体が行政経営のネクストステップに踏み出すための研究成果である。言い換えれば、行政経営改革には、目標に向けた現状分析が不可欠であり、そのためにまずは、経営の責任者がステークホルダーに対して、自治体経営の現状について説明責任を果たすことが必要であるという問題意識に基づく研究成果である。
 わが国においては、自治体が広く社会に対して行うディスクロージャーが制度として確立していない。このことが行政経営改革を進めるうえでの課題であることにパブリックサービス研究所は着目し、これまでも自治体が作成するディスクロージャー誌を対象とする表彰制度を設け、応募自治体のディスクロージャーの改善に寄与してきた。
 2016年度の研究成果である「自治体版MD&A」は、これまでの「自発的なディスクロ―ジャー」の内容を一段と充実させるための試作であり、いきなり公表を前提として作成されたものではない。試作であるため、当該自治体の作成趣旨を尊重し、異なる標題や内容で作成され、必ずしも統一的な様式とはなっていない。いくつかの参考事例であり、今後も一層精度を高め、アカウンタビリティと行政経営改革の一層の進展に資するものとすることを目標としている。そのため、本試作実例集の利用にあたっては、今後公表を前提として本格的に作成される「自治体版MD&A」の在り方を考える上での研究上の参考例の性格を有すること、個別的な記載内容については作成した自治体の公式の開示物ではないことを十分に理解していただきたい。


2017年6月
早稲田大学パブリックサービス研究所
公会計改革推進プログラム
公会計改革推進研究会部会長
柴 健次