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中国消費金融会社の法規制と法務上の留意事項について

熊 潔
西南政法大学

茶 めぐみ
三井住友信託銀行

2009年7月22日、銀行業監督管理委員会(以下、「銀監会」という)は、「消費金融施行管理弁法」(以下、「消費金融管理弁法」という)を公布した。消費金融管理弁法に基づき、2010年に入ってから、4社が銀監会の認可を得て、消費金融会社を開業したが、2012年6月末日現在、上記4社以外で開業している消費金融会社は無い。その原因としては、上記4社の開業後の業績が芳しくないことが考えられる。
 消費金融会社の法的根拠となる消費金融管理弁法は、第1章 総則、第2章 設立、変更及び終了、第3章 業務範囲及び経営規則、第4章 監督管理、第5章 附則の全5章、全39条 からなる。
 消費金融会社の設立は、銀監会の定める認可条件を満たす必要があり、出資者については、主たる出資者の条件と一般出資者の条件があり、主たる出資者、一般出資者共、出資持分に対し、3年以内に譲渡しない旨を定款に記載することが義務づけられている。また、消費金融会社の最低登録資本金は3億人民元である。
 消費金融会社は、耐久消費材貸付の実績があり、かつ返済履歴の良好な借入人に対してしか、資金使途を限定されない一般用途の消費者貸付を行うことはできない。また、借入人の月収5倍を超える金額の与信供与は禁止されている。
 消費金融管理弁法は、消費金融会社に対し、高度なリスク管理体制の構築を要求する代わりに、貸付施策の決定及びリスク統制に係る核心的技術と密接に関連する業務以外の業務については、外部委託を認める規定がある。もっとも、消費金融会社は、外部委託契約に調印署名する前に、あらかじめ、中国銀行業監督管理委員会に対し、外部委託業務に係る主たるリスク及び想定されるリスクの回避措置等を報告する必要があり、綿密な計画が必要であると考えられる。
 消費金融会社に、借入人から提供される個人情報について、秘密保持義務を負う。
消費者金融市場の拡大に伴い、多重債務者問題、ヤミ金融問題も、顕在化することが考えられる。現在、「中華人民共和国消費者権利保護法」において、消費者金融の利用者は、「消費者」は含まれていないため、消費者金融から起因する紛争が発生した場合には、同法が適用されないと考えられる。しかし、近年、「金融消費者」概念を同法に追加し、消費者保護の対象にすべきという意見も多数ある。


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