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2017年全国大会 7月15日 報告要約


“キャリア面談”の報告が管理職のキャリア支援に与える影響
― 企業内キャリアコンサルタントの実証 -

法政大学大学院キャリアデザイン学研究科 島村泰子

本稿の目的は、キャリア支援には管理職とキャリアコンサルタントの連携が必要であるという認識の元に調査を行った。 第 1「管理職とキャリアコンサルタントとの面談の違い」で、能力・役割期待・キャリア展望の情報把握の相違を明確にした。 第 2「キャリアコンサルタントの情報が管理職に与える影響」で、管理職の行動変容、情報把握力と行動変容の関係、情報受容力とキャリアコンサルタントとの関わりについて検証した。


「女性管理職登用を促進するための初期キャリア育成に関する考察」

中央大学大学院戦略経営研究科ビジネス科学専攻 笹尾佳子

女性管理職登用を促進するためには初期キャリア段階のおける就業継続に繋がるキャリア意識の形成、 自己効力感の醸成、ロールモデルの存在および昇進意欲の醸成、管理職に就くためのスキルの獲得が重要だとされる。 現在、多くの企業が女性活躍支援等の研修を実施しているが初期キャリアでの育成や研修、その成果に関する研究は少ない。 本研究はA社において女性活躍支援研修を実施後3か月後の行動変容や就業継続や昇進意欲がどのように変化するかを調査分析する。


女性のグローバルキャリア形成と Self-initiated Expatriation; 海外移動の類型との関連から

上智大学 細萱伸子

本研究では、自発的な海外への移動による就業が、女性のグローバルキャリアの形成とどのように関連するか、 海外への移動と帰任がキャリア展開について果たす役割を検討した。データとして 27 名の海外就業経験のある女性インタビュー結果を用いた。キャリアの展開は SIE と関連するカテゴリー間の移動に関連付けられ、本人のキャリアへのこだわり、 さらにそれを支える周辺の意識、支援とも関連することが確認された。


勤務間インターバルは雇用者のワーク・ライフ・バランスに貢献するか?

中央大学大学院戦略経営研究科 佐藤博樹一橋大学大学院商学研究科 島貫智行

勤務間インターバルとワーク・ライフ・バランス(WLB)の関係を個人調査に基づいて検討する。勤務間インターバルとは、 残業を含めた勤務終了時刻から翌日の勤務開始時刻までに、一定の休息時間を設けるものである。 本報告では、企業が設けた勤務間インターバル制度ではなく、就業実態としての勤務間インターバルの有無が雇用者の WLB に与える影響について、他の労働時間に関する要因も考慮に入れて実証的に検討するものである。


長時間労働が健康に与える影響に関するパネル分析

大阪大学大学院国際公共政策研究科 藤井英彦

過剰な長時間労働が社会的な問題となり、労働時間規制見直しの動きが見られる。本稿ではパネルデータを用いて労働時間と労働者の健康との関係について分析を行い、 月間時間外時間 70 時間超で健康が悪化すること、一方、職場でのソーシャルサポートが、 長時間労働による健康への影響を改善する可能性を示した。企業が今後の人事施策を検討するうえで参考となる知見が得られた。


ダイバーシティ推進と女性の昇進プロセスに関する研究
-A社の取組み事例から-

法政大学大学院キャリアデザイン学研究科 岡野康子

ダイバーシティ推進の重要な側面である女性活躍推進に注目し、その重要なアウトカム指標である女性社員の管理職昇進に着目する。 企業事例を取り上げ、「ダイバーシティ推進策(女性向け施策・管理職向け施策・働き方変革の 3 つの主要施策)」が、女性の「昇進プロセス(昇進前後に跨る一連の状況)」に及ぼす影響について、 施策実施前と後に昇進した女性管理職にインタビューし、両者を比較分析することにより、施策効果を考察する。


大学生の地域志向を醸成するプログラムに関する考察
-地方圏中小企業の採用ニーズに照らして-

北九州市立大学地域戦略研究所・合資会社フレキシブルエンタプライズ 田中ひろみ

大学生の就職が好調の中、特に地方圏の中小企業では、新卒採用の未充足が深刻化している。地方自治体では、 若年者の流出を抑制すべく、政府の施策に基づき、東京一極集中の是正に係る施策を掲げ若年者の地域定着、 地域就職を推進している。「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」(文部科学省)を地域の公立大学が採択し、 産学官が協働で行う取り組みから、学生の地域志向を醸成するプログラムを事例として考察する。


企業の人材確保活動におけるジョブシャドウイングの可能性
-大学のキャリア教育と連携した採用戦略-

静岡大学 大八木智一

静岡大学ではジョブシャドウイングを中・高学年で実施するインターンシップの前段階における キャリア教育導入時の体験学習として位置づけ、教室でのキャリア教育と一連のインターンシッププログラムを 体系的に組み合わせ、学生の社会人ステージへの円滑な移行を目指している。 ジョブシャドウイングは新規学卒者の未充足や早期離職に悩む地方圏の企業にとっても有効性が期待でき、大学と地域企業との新しい連携のあり方を示す。


戦略的採用におけるフィードバック・ループ
―採用から組織を変革させる日・仏・米企業における事例―

リクルートワークス研究所 中村天江リクルートワークス研究所 碇 邦生

企業の採用活動は一度きりのフローではなく何度も繰り返す「ループ」構造をもつ。採用を高度化するうえでは、 繰り返しの中で改善していくことが不可欠だが、そのような研究はこれまでほとんど行われてこなかった。日・仏・米国の企業へのインタビュー調査を通じて、 採用のフィードバック・ループには、HR データの活用、企業内役割分担、変革エージェントの存在という3つの類型が発見された。


職種間および管理職・非管理職間のフォロワーシップの差に関する検討
―採用から組織を変革させる日・仏・米企業における事例―

摂南大学経営学部 西之坊 穂

本研究の目的は、職種間および役職間でフォロワーシップに差がみられるのかに関して経験的研究を行った。 A社の協力を得て分析した結果、フォロワーシップのすべての下位次元において管理職・非管理職間で有意な差が確認された。 また、フォロワーシップの配慮的行動のみ職種間で有意な差が確認された。さらに、フォロワーシップの積極的行動のみで職種間×役職間でやや有意な交互作用が確認された。


地域活性化リーダーの育成に関する考察
―採用から組織を変革させる日・仏・米企業における事例―

いわき明星大学 大嶋 淳俊

超少子高齢化の急進と首都圏へのヒト・モノ・カネ・情報の集中が進む中、 地方(地域)の活性化の必要性は増している。本稿では、地域の活性化に活躍するリーダー人材のあり方と育成方法について、 事例を基に要件や課題を検討した。その結果、地域活性化の発展段階に応じて、適したリーダー像とリーダーシップ・モデルが必要とされていることを指摘した。


リーダーシップ教育における実施者への効果に関する考察

東洋大学国際観光学部国際観光学科 永井恵一

18 歳選挙権により政治への参加が求められるようになった高校生ならびに高校教育にとってリーダーシップ教育の充実が課題となっている。 公益財団法人松下政経塾が高校生を対象に実施している「こころざし探求プログラム」に着目し、 どのようなリーダーシップ教育が実施されているのか、受講者だけでなく、実施者にとってどのようなメリットが認められるのかを明らかにし、リーダーシップ教育の効果の全体像を考察する。


男女の昇進スピード格差と配置転換・職能経験

金沢学院大学・奥井めぐみ 関西学院大学・大内章子

本研究は、女性の管理職が少ない原因は、職場内での経験が男性と異なることにあるのではないか、 という予測のもと、独自のアンケート調査を用いて、昇進スピードに配置転換・職能経験が与える影響について分析することを目的としている。 Cox 比例ハザードモデルを用いて、昇進年齢に影響を与える要因を分析した結果、男女で、配置転換や職能経験が昇進スピードに与える影響は異なることなどが示された。


パートの基幹化が進む要因と基幹化に伴う人事管理の変化
―食品製造販売業の事例-

山本法律事務所 神野由香里

本稿では、パートの基幹化に至る要因と変化する人事管理の調査を通じて、 基幹化の進展に伴い近接する正社員との問題に配慮するには、どのような要因が重要か企業と従業員へインタビューを実施した。 調査の結果、パート全員の職務が高度化することで雇用体制に変化が生じており、正社員への登用が継続的に実施されること、 パートと正社員との職務内容の違いを丁寧に説明することが、配慮する人事施策として重要と考えられる。


多様な正社員の人材ポートフォリオの動態性に関する一考察
-コース別雇用管理制度一般職を対象とした事例から-

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了 平本 奈央子

本稿では、多様な正社員としてコース別雇用管理制度の一般職を起源とした限定正社員を対象に、 人材ポートフォリオにおける動態性について分析考察を行い、最終的に無限定正社員と同一の象限に位置することが明らかとなった。 象限を超える変化は、企業戦略に基づいた動態性マネジメントによるものであり、それ次第では雇用条件の限定性が企業における人材価値向上を制限する要因とはならない、と考えられる。


ポスト・アパルトヘイト南アフリカの労使関係に関する一考察
―日系企業の事例を中心に―

九州国際大学 兪 成華

本論文は南アフリカに進出する日系企業の労使関係管理の特徴と今後のあり方について考察する。 まず既存文献や雇用・労働関係法規のレビューを通じて南アフリカの労使関係に関する特質を論述する。 次に在南アフリカ日系企業に対する工場見学・インタビュー調査に基づき、具体的な事例を研究しながら日系企業の労使関係管理の実態について明らかにする。 最後にこれらの事例研究から導かれたインプリケーションを提示していく。


中国の企業における工会の役割と機能に関する実証研究
―江蘇省の事例に基づいて―

早稲田大学大学院経済学研究科 金鑫

本報告では、2016 年 8~9 月、中国南京市を中心にした江蘇省の製造業における工会設立済みの企業(6 社)、 及びその企業に所属する従業員を対象に実施したアンケート調査の有効回収サンプル(368 票)に基づいて、 中国の企業における工会の各機能がどの程度有効に発揮されているのかという現状、 並びに順序 Probit 回帰分析により、工会における各機能の実現程度が労働者の工会に対する各満足度に与える影響に関する分析を試みた。


日系海外子会社の人材現地化と経営パフォーマンスの関連性分析
―「海外派遣者の現地適応力」、「現地従業員と第三国籍従業員が本社への帰属意識」を加えての「人材現地化」視点からの考察―

慶應義塾大学商学研究科博士課程 翁 娜娜

本論文は台湾進出日本企業のうち、人材現地化をしている企業について、人材現地化が経営パフォーマンスにどのような影響を与えるか、 またどのように影響しているかを明らかにしていくことである。「現地従業員の比率」のほかには、 「海外派遣者の現地適応力」、「現地従業員と第三国籍従業員が本社への帰属意識」を加えて人材現地化の水準を測り、事例を分析しながらアンケート調査データを実証分析する。


感情労働における同輩との関係性と感情自己防衛の影響

神戸大学大学院経営学研究科 野村佳子

本研究は,観光産業従事者を対象として,感情労働に影響を与え,バーンアウトを低減し, ワーク・エンゲイジメントを高める要因を明らかにすることを目的としている。インタビュー調査から要因を探索的に抽出してフレームワークを設定, 妥当性を定量的に分析した結果,「気軽に話を聞いてもらえる環境」「自分から同輩への働きかけ」と「顧客の怒りと自分との切り離し」がモデレータとしての働きを持っていることが検証された。


フィードバックは万能薬ですか?
―帰属理論の視点から―

東海大学経営学部 徐毅菁

ビジネス場面に起こった失敗に対し、上司からのフィードバックはモチベーションの維持に必要不可欠だと思われるが、 それがフィードバックの効果を過大評価にした懸念が残される。そこで、本稿は、ワイナーの帰属理論を理論根拠とし、 失敗回避志向と失敗奨励志向といった対照的なフィードバック・スタイルの効果を統計的に検証した。分析の結果、 個人の失敗原因に対する帰属行動の違いによって、フィードバックの効果が大いに異なることが明らかになった。


働き方の限定性がもたらす組織との一体感
-多元的アイデンティフィケーションに着目して-

明治学院大学 林 祥平首都大学東京 西村孝史

本発表では,働き方の限定性(仕事・勤務地・労働時間)が同一化および職場モラールに与える影響を検討する。 多様な正社員(厚生労働省,2014)が普及していく中で,これまでの「いわゆる正社員(=無制約社員(今野, 2012))」と比べて 仕事・勤務地・労働時間のいずれか1つ以上の制約を持つ限定正社員は,働き方の限定性ゆえに所属組織に対する認知が限定的であり, それ故に同一化のプロセスが無限定の正社員と異なることを指摘する。

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