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2018年全国大会 6月30日 報告要約


“キャリア面談”の報告が管理職のキャリア支援に与える影響
チームによる健康増進活動は従業員のウェルビーイングを高めるか

武蔵大学経済学部 森永雄太

本研究では、組織レベルの健康課題であるコミュニケーション不足の解消と個人のヘルスリテラシーの向上を目指す健康増進活動が従業員のウェルビーイングと業績に与える影響を検討した。 2つの組織でチーム単位の活動を用いた介入研究を行った結果、介入前後で従業員のウェルビーイングの一部と業績が統計的に有意な水準で上昇した。 また調査結果からチーム編成の方法によって効果に違いが生じる可能性について検討を行った。


組織内公正性と倫理的リーダーシップの相互作用 ~知覚された組織的支援とリーダー・メンバー間交換関係への影響に注目して~

一橋大学大学院経営管理研究科 中津陽介

本研究は、組織内公正性と倫理的リーダーシップの関係性を検討する実証研究である。 組織内公正性研究において確認されている手続的公正が知覚された組織的支援(POS)を高める効果、および相互作用的公正がリーダー・メンバー間交換関係(LMX)を高める効果それぞれに対して、 倫理的リーダーシップの調整効果を統計的に分析した。 その結果、手続的公正と倫理的リーダーシップの交互作用項はPOSと統計的に有意な負の関連を示し、 相互作用的公正と倫理的リーダーシップの交互作用項はLMXと統計的に有意な正の関連を示すことがわかった。


上司部下面談におけるジョブクラフティング エスノメソドロジーによる相互行為分析

労働政策研究・研修機構アシスタントフェロー 松永伸太朗
法政大学キャリアデザイン学部教授 梅崎修
労働政策研究・研修機構主任研究員 池田心豪
労働政策研究・研修機構主任研究員 藤本真
労働政策研究・研修機構副主任研究員 西村純


本報告では、上司部下面談場面のビデオデータの相互行為分析を通して、 従業員のジョブクラフティング(仕事の境界の物理的・心理的・認知的な変化:JC)が実際の場面の中でいかにして達成されているのかを明らかにする。 上司部下間の言語的・非言語的なやりとりを詳細に分析し、上司のどのような行為が実際にJCと関わるのかに焦点を当てる。 分析の結果、上司が部下の仕事の希望を聞く際に用いる、部下の希望を尊重する発話のデザインの仕方がJCと深く関わっていることが明らかになった。


日本人女性自発的海外赴任者における グローバルなキャリア発達とキャリア自律の関係

上智大学 細萱伸子・新井範子・竹内明香

本報告は、日本人女性のグローバルなキャリア形成のメカニズムを明らかにしようとする。 特に昨今注目を集める自発的海外赴任者(Self-initiated Expatriates: SIEs)に着目し、そのキャリア自律の意識と具体的行動の内容について、 グローバルなキャリア発達における自律行動と環境との調整という点から探索的に検討した。 グローバルなキャリア発達における自律意識は具体的な行動を通じてキャリアの展開や発展に関連するが、環境との調整という行動を必要としていることが明らかになった。 また個人はその行動を通じて、今いる滞在地での自らのキャリアの意義と可能性を問い、達成可能な課題として調整することを通じて、自らのバリューを確認しているものと考えられた。


企業の言語戦略と人的資源管理

西南学院大学大学院経営学研究科博士後期課程 髙松侑矢

企業のグローバル化に伴い、手段としての英語の重要性が高まり、組織レベルでの対応が求められる。 特に、英語は日本人従業員にとって最も苦手とする能力でもあり、日本企業本社で外国人人材の活用を促すための手段である。 そのため、社内における言語戦略が必要になる。本報告では、インタビューを行った企業の事例より企業の言語戦略を人的資源管理からアプローチすることを試みる。 その結果、トップの国際経験、適切な言語使用が求められる。


後継者のキャリア形成が事業承継後の企業パフォーマンスに与える影響

法政大学大学院キャリアデザイン学研究科 佐藤 憲

本研究では、後継者のキャリア形成のなかでも特に職業キャリアに注目して、事業承継後の中小企業の企業パフォーマンスの決定要因を検証した。 その結果、異業種他社経験は自社経験や同業他社経験と比較して後継者の経営能力を高める効果が強く、 さらに後継者に求められる事業承継後の戦略・施策といえる「戦略の変更」にも効果を持つことが確認された。 異業種他社経験が後継者の「経験の幅」を広げ、新たな知識と他業界の経営手法の獲得を可能にすることが明らかになった。


中小企業によるプロボノを活用した協働の考察‐NPO法人G-netによるシェアプロの取組み事例より-

岐阜大学地域協学センター特任助教 今永 典秀

中小企業が抱える課題に対して、一定のスキルを有した社会人が無償のボランティアであるプロボノとして協働するプロジェクトについてNPO法人G-netに対するインタビュー調査を中心に、 概要と効果について把握した。中小企業は自社にない資源を外部のプロボノを通して活用することができ、参加者はスキルアップや人脈拡大、 地域の理解や貢献に寄与すると考えていることが把握できた。


「専門知」と現場の問題解決―人事・労務研究の可能性

北海道大学 米山 喜久治

現代の学問は「予定調和」に依拠し「部分」の分析中心。「専門化」、「細分化」が進んでいる。 複雑性の増大と変化する諸問題の解明には「総合」が不可欠である。現場の当事者は、全体像と本質が把握できない状況におかれている。 学会では会員の多様な社会的背景、「専門」、知的関心を活かして切磋琢磨。共同研究によって個別の「専門知」を統合して問題の「全体像」を描き本質を解明する。 当事者と成果を共有し土着の創造性の中に問題解決の可能性を探り出していく。


限定正社員と離職率−大手外食チェーンを中心に−

大東文化大学経営学部 國府俊一郎

本研究は、流通小売業や外食業において採用が増加している限定正社員制度の離職率への影響に関する調査をまとめたものである。 人手不足の労働市場における限定正社員制度導入のそもそもの動機は、労働力の安定的供給である。 本研究の事例では、多様な雇用区分の提供によって、正社員の採用数の増加には確かに成功している。 しかしながら、将来企業の幹部となっていく社員の定着率向上には苦戦している実態が明らかになった。


ホスピタリティ実践に関する研究

目白大学経営学部 吉原敬典

ホスピタリティを実践するとは、顧客から見た「人間価値」「サービス価値」「ホスピタリティ価値1」の向上に手を打つことである。 一つは、経営の土台として位置づける「人間価値」である。 第二は、「サービス価値」である。業務機能の標準化、マニュアル化、システム化、IT化、ロボット化などが主な方法である。 第三は、「ホスピタリティ価値 」である。組織の特徴を明示することによって競争力となる価値である。


サービス業で働く従業員の定着を促す要因 -京都市の宿泊施設を題材に-
京都大学大学院経済学研究科 山本 彰子

環太平洋大学経営学部 柿沼 英樹
京都大学経営管理大学院 若林 直樹

人材の重要性が認識されているサービス業では、優れたサービスの提供に向けた人材の能力や心理的要因の開発に大きな関心が注がれている。 しかしその一方で、開発対象となる人材の定着についてはやや議論に乏しい。 そこで本研究では、特に離職率が高い宿泊業を対象に、従業員の定着を促す組織的要因を検討した。 その結果、戦略やサービス方針の明確な提示や、働き方の柔軟化が従業員の定着と正の関係があることを確認した。


職場にLGBTアライが存在する効果の実証分析
サイレント・マジョリティを動かすことによる多様性を活かす組織改革

中央大学大学院 戦略経営研究科 東 由紀

ダイバーシティ経営の推進の一環として欧米企業が先行して取組むLGBTなど性的マイノリティの従業員に対する施策は、日本ではまだ取組む企業が少なく、研究データも存在しない。 本稿の目的は、LGBTの理解者、支援者である「アライ」に着目し、アライの存在がLGBT当事者の勤続意欲に与える影響について、 勤続意欲に関する他の要因も考慮に入れて実証的に検討することにより、国内企業におけるLGBT施策の効果と課題を考察する。


経営者の女性に対する固定観念と女性活躍推進に関する人材マネジメント施策の導入

大阪国際大学  小泉 大輔

本稿では,経営者に対する質問紙調査のデータを通じて,経営者の持つ女性労働者に対する固定観念が女性活躍に関する人材マネジメントの導入に与える影響を検証した。 分析の結果,経営者がパターナリズムを強く持つほど,また経営者が女性管理職に対するネガティブなステレオタイプを持つほど,女性活躍のマネジメント施策を導入しないことが明らかとなった。


働き方の多様化の持つ可能性 ~日本型ダイバーシティ・マネジメントの開発に向けて~

大阪市立大学大学院経営学研究科 特任講師 辺見佳奈子

生産年齢人口の減少により、日本企業にとって多様な人材の雇用や活用は主要課題となっている。 多様な人材の雇用や活用は米国で誕生したダイバーシティ・マネジメント分野で研究されている。 米国の研究は就業者の多様化を主な研究対象としている。 他方、日本における多様な人材の就労は非正規雇用や短時間勤務、要するに雇用形態や勤務形態の多様化にも特徴を持つ。 ゆえに、本稿では日本における就業者、雇用形態、勤務形態の多様化を分析することで、日本型ダイバーシティ・マネジメントの開発を試みる。


二つの柔軟性概念:スキル・行動の柔軟性(FHRM)と働き方の柔軟性(FWA)の相互作用
―働き方改革へのSHRM論的アプローチ―

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所
首都大学東京大学院博士後期課程 藤澤 理恵
首都大学東京 西村 孝史

柔軟性志向のHRM(FHRM)と柔軟性な働き方の施策(FWA)をHPWSとして捉え、4種類の組み合わせで導入する企業群の特徴を日本企業161社のデータで検討した。 本研究の発見事実は、第1に、FHRMにおいて個人の柔軟性確保が優先される場合にFWAが導入されること、第2に、“場所”のFWAが「働き方改革」の成果実感を高める一方、 配置転換を柔軟化するFHRMとの間の負の交互作用から、企業視点と個人視点の柔軟性施策の代替関係を見出したことである。


仕事表(スキル・マップ)による人材育成とOJT

学習院大学 脇坂 明

OJTの中身を端的に表すと思われる「仕事表」(技能マップ)について、まずJILPT2016年調査より、 製造業における仕事表の普及度とほかのOJTの方法や慣行との関係をみると、ジョブ・ローテーションだけでなく、 個別育成計画やOFF-JTが充実している企業において、技能マップが利用されていることがわかった。 つぎに技能職だけでなく、ホワイトカラーへの普及可能性について、製造業B社の事例を見ると、 普及する可能性があること、限界としては、直接、人事考課に反映することには慎重であることを述べる。


企業変革期の人材マネジメントに向けた予備的考察
地方鉄道会社A社のデータを用いて

北九州市立大学大学院マネジメント研究科 鳥取部 真己

本稿では、変革を進めている地方鉄道会社A社でのアンケート調査データを用いて、変革行動や危機意識にまつわる研究課題を分析した。 その結果、危機意識としての変革の受容が高まることで、変革行動が高まること、そして変革の受容は係長以上が最も高く、変革行動としての発案は勤続年数が高いほうが行われるという、 既得権を持つ層のほうがむしろ変革に積極的である可能性が部分的に示唆された。また、顧客と直接接しない職種は顧客志向の変革行動が弱いことも示された。


正社員の副業・兼業に関する考察
-人材戦略の観点から-

合資会社フレキシブル エンタプライズ兼 北九州市立大学 地域戦略研究所 田中 ひろみ

現在、政府による「働き方改革」が推進されており、「柔軟な働き方」の1つとして「副業・兼業」が示されている。 これらの社会的背景を受け、研究の第1フェーズでは、政府による先行研究を基に概況を把握し、法律や社会保障制度、企業風土等、企業と働き手の両者における障壁、 そして企業の人材戦略としての効果について考察した。本報告は、第2フェーズとして、企業の人事制度改定に留まるのではなく、 人材戦略として機能することが新たな日本的雇用システムに求められるとの問題意識を持ち、副業・兼業が当然の社会になると仮定、 企業および働き手の立場から課題を整理し、実効性を探った結果を提示する。 今後、社会では企業と働き手が「柔軟な働き方」について認識共有することを前提とし、副業・兼業を人事課題の解決手段として捉えることの重要性について人材戦略の観点から考察する。


多義的曖昧性とキャリア選択:若手社員の「とりあえず正社員」意識の持続的影響

千葉経済大学 中嶌 剛

本研究の目的は,「とりあえず正社員」という労働市場における多義的かつ曖昧な潜在意識の持続的効果の構造をキャリア形成面への影響を通じて明らかにすることである。 推定の結果,関係構築に対する近視眼的な漠然とした不安が入社前のとりあえず志向の主要因となり,曖昧性耐性(Tolerance of Ambiguity;TA)に関係することが明かされた。 また,就職氷河期等の世代ごとのキャリア形成面への影響の差もうかがえた。曖昧さをこなせるようになることが,人生を上手に生きることに繋がることを示唆した。


地方移住と都市企業勤務者のライフキャリア ―企業支援による地方移住に関する調査の結果を踏まえて―

大正大学 塚崎裕子

都市企業勤務者を対象とした地方移住に関する調査の結果から、若い子育て世代ほど地方移住に関心が強い傾向があること、 都市企業勤務者の約4割が現在勤めている企業から地方移住に係る支援が得られるならば地方移住したい或いは地方移住を検討したいと考えていること、 そうした都市企業勤務者の多くは若い世代を含めセカンドキャリアの中に地方移住を位置付けていること等が明らかになった。 こうした潜在的な地方移住希望者の存在は、企業にとって従業員のワークライフバランスの実現や退職支援の観点から意味を持ち得る。 また、移住促進策を推進する市町村にとっては、都市部企業との連携により新たな移住希望者を獲得し、その移住を促し、ひいては地域の活性化につなげられる可能性がある。


電機産業で働く技術者のキャリア自律と労働移動

関西外国語大学 古田克利
同志社大学 中田喜文

本稿の目的は、技術者のキャリアをキャリア自律および労働移動の視点から捉え、リーマンショック以降の、 日本の電機産業で働く技術者のキャリアの展開の様相を明らかにすることである。 具体的には、電機連合が2008年と2015年に実施した技術者調査の個票データを用い、2時点における技術者のキャリア自律(4変数)と労働移動(2変数)の変化を分析した。 その結果、キャリア自律を測定する変数の一つであるスキル開発行動において、技術者の2極化が進んでいることが示唆された。


若手人材の基礎的な職務遂行能力構造の探索

東京工業大学学生支援センター 伊東幸子

当報告では、2011年~2012年に電機連合が傘下企業の若手人材を対象に実施したアンケート調査 の能力保有に関する本人自己申告データの主成分分析により、 若手人材の基礎的な職務遂行能力の構造を探索する。 分析結果からは、教育分野での「新しい能力」(松下,2010)、社会人基礎力(経済産業省,2006)などの概念で提唱されている構造と類似する複数の下位次元が導出された。 事務系、技術系にサンプルを分けた分析では、職種による構造の違いが見られた。

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