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2019年全国大会 6月30日 報告要約

“The mechanism of HRM for generating women managers
- Pairwise interaction between top management, line managers and women”-

立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 中川 有紀子

女性従業員を女性管理職の供給側、また雇用主である企業側を女性管理職の需要側とみて、 取引コスト理論とエージェンシー理論を用いて、女性管理職が日本の組織において、なぜ増えにくいのかについて組織内要因分析する。 CEO,現場管理職、女性従業員の3者がそれぞれ限定合理的に動くがゆえに、科学的に企業内で不条理に陥っていることを理論分析および定性分析から論じる。

Multi-skills Development and Workers’ Intention on Multi-skills Capability in Production Organization of Sri Lanka

Graduate School of Sociology Kansai University Doctoral Course Student  Manjula Wanninayaka

本研究では、スリランカにおける製造業の生産労働者の多能工化開発と複数の仕事を学ぶ意欲を定性的に調査した。 チーム作業を促進するために必要不可欠な要素、あるいは労働者に内発的報酬を与える要素として、多能工化開発に企業側が積極的である一方、 経済的報酬が労働者の複数の仕事を学ぶ意欲を向上させるという結論に至った。

Negative Emotions and Helping: The Moderating Role of Emotion Differentiation

Okayama University  Yuanyuan Gong

要約: ネガティブ感情と援助の関係についての伝統的な見解は一致していない。 我々は個別のネガティブな感情の区別に関する個人差によってこの関係の不一致が説明される可能性を提示する。 本研究では、感情特性と感情状態の両方について、これらがどのように感情区別と相互作用して援助行動に影響をおよぼすかを検討した。 二時点の質問票調査データを用いて回帰分析を行った結果、感情区別は同情、不快感ネガティブな感情状態が援助行動におよぼす影響を調整していた。

「外国人技能実習生の幸福度に関する実証分析」製造業への外国人単純労働者導入の布石

中央大学大学院戦略経営研究科博士後期課程 長濱 康之

研究の最終目的は、外国人技能実習生の主観的幸福に着目し、これを高めることで労働生産性を高める人事施策を明らかにすることだが、 今後、来日後の主観的幸福の経年変化をパネル調査で追っていくためにも、本報告では、まず比較対象として来日前の実習生の主観的幸福を実証分析する。 本報告では、その分析結果を第一印象の形成にとって重要な来日当初の労働生産性を高める人事施策に活かすことを目指す。

中国日系企業における大卒ホワイトカラーの定着
―小売企業A社の事例研究―

早稲田大学トランスナションナルHRM研究所招聘研究員 孫 豊葉

本研究では、中国の日系小売企業A社において、現地人労働者の大卒ホワイトカラーの定着について、人事制度を裏付けとして、 7年間の企業内人事マイクロ・データを用いて統計的に分析した。 早期離職グループと非早期離職グループの二つに分けた推定結果からは、社内の勤続年数と社外の経験年数が離職の確率に与える影響はグループによって違うのが観察され、 年功的な人的資源管理制度を受け入れる者と企業特殊技能の蓄積が多い者が定着する可能性が高いと推測した。

日本人女性自発的海外勤務者のキャリア・トランジション
:海外赴任動機、適応とローカル・コミュニティの影響

上智大学  細萱 伸子  新井 範子  竹内 明香 

本研究は企業派遣によらず海外で就業する日本人女性について、そのキャリア・トランジションを明らかにした。 ホノルルにおける調査の分析により、キャリア発展のモデル化を試みた結果、ローカル・コミュニティ、つまり親族や友人などのネットワークの支援を受け、 トランジション上の困難を軽減し、より効率よく現地に環境適応した場合には、新しい価値を現地社会に提供し、より高い成果を生み出していくプロセスが抽出された。

次世代経営人材育成モデルの再構築

宮城大学 大嶋 淳俊

日本企業では、次世代経営人材(次世代リーダー人材)の不足が最重要課題の一つとなっている。 次世代経営人材育成の取り組みについて事例研究を行った結果、選抜型研修の改善・拡張に加えて、 人材選抜・プール制度及び戦略的人材配置制度など各種の人事制度と融合させながら各階層で次世代経営人材を育成する「リーダーシップ・パイプライン」構築に取り組まれていることがわかった。

新規大卒新入社員のマネジメントに関する研究
-リアリティ・ショックに影響を与える要因の性差に着目して-

立教大学経営学部 高崎 美佐

キャリア形成には入社後間もない時期の経験が影響を及ぼすことが指摘されていることから、 本研究では初期キャリアでの経験と「リアリティ・ショック」がキャリア形成に及ぼす影響について男女別に分析を行った。 分析結果からは、キャリア形成に影響を及ぼす要因が男女によって異なることが示された。 長期的なキャリア形成を促すために初期のマネジメントにおいて留意する事項が男女によって異なる可能性が示唆された。

多様化する日本企業の能力開発・キャリア管理
~アンケート調査に基づく能力開発・キャリア管理の分類~

労働政策研究・研修機構 藤本 真

本稿では、大手日本企業のアンケート調査の結果を分析し、「多様化・個別化の促進」と「組織志向」という2つの有力な因子を抽出したうえで、 日本企業を4つのタイプに分類した。また各タイプと企業の経営上の取組みとの関連を分析したところ、 能力開発・キャリア管理における「多様化・個別化の促進」と「組織志向」の両立は、海外マーケット重視、スピード重視の企業において進められる可能性が高いことが明らかとなった。

OB・OG訪問の実態と効果 ―OB・OG訪問を行った学生視点からの考察-

中央大学大学院戦略経営研究科博士課程 千野 翔平

大卒就職におけるOB・OG訪問の機能と役割について検討する。 特に、OB・OG訪問の4つの機能「情報」「社会化」「シグナル」「選抜」が今日の大学生に対して、どのような影響を与えたのかに関して、 調査データを用いて検証を進めた。OB・OG訪問は、大学生への「シグナル」機能や「価値観・志向」機能に関する影響を強く与えていることが確認された。 またOB・OG訪問は、大学生の大学から社会への接続に向けた「社会的」機能としての役割を強めている可能性が示唆された。

インターンシップやアルバイトを介した採用・就職の可能性に関する実証分析
-大学生に対するアンケート調査結果より-

北海道大学 亀野 淳

就職が内定している大学生に対するアンケート調査により、インターンシップやアルバイト先企業からの就職の勧誘状況など、以下の点が明らかになった。 ①インターンシップについては、学生の能力把握、企業の実情把握というよりも学生と企業の最初の接点にしかなっていない。 ②アルバイトを経由して就職に結びつけるという面は非常に弱いが、大学での専攻と関連が強い場合は企業からの勧誘もケースも多く、発展の可能性もある。

大学生のリスク選好と内定取得率
― 就職活動の個票データによる分析 ―

大阪大学全学教育推進機構 柿澤 寿信
法政大学キャリアデザイン学部 梅崎 修

本研究では、大学生の就職活動に関する個票データを用いて、個人のリスク選好が就職活動のパフォーマンスに及ぼす影響を分析する。 リスク選好の尺度として、クジに関するアンケート設問の回答を用いる。 4月末時点の訪問企業数や内定取得の有無との関係を分析した結果、リスク回避度の高い学生は、内定取得率が相対的に低いことが明らかになった。 これは、リスク選好による選別が生じている可能性を示唆する結果である。

自発的なメンタリング行動の規程要因の実証研究
成果主義的な評価・処遇の仕組みとメンターの心理特性に注目して

首都大学東京大学院 経営学研究科博士課程 藤本 邦男

インターネット調査による556名のデータを用いて、メンタリング行動の規程要因を検証した。 成果給を①個人の給与変動(個人内の変動給)と、②他者との給与格差(個人間の変動給)の2つで捉えた時、 個人内の変動給及び心理的エンパワーメント(PE)は、メンタリング行動を促進し、個人間の変動給とPEの交互作用項は、 メンタリング行動を阻害した。成果主義制度によりメンタリングが成果追求を意図した戦略的行動として活用される視点を提示し、人事施策及びPEがメンタリング行動に与える影響を指摘する。

遅い昇進の二つの顔
大規模自治体の歴史比較分析

福島大学 林 嶺那

本稿の目的は、日本の人事管理システムの多様性に注目した二つの新しいモデルを提起することである。 これまで、日本の社会経済環境の下、学歴別昇進管理の存在を前提とし、技術的に見て合理的な単一モデルとして、遅い昇進モデルが提起されてきた。 これに対し、本稿は、学歴別昇進管理の度合いに顕著な特徴を持つ極端な事例(大阪市役所と神奈川県庁)の歴史比較分析を通じて、 昇進・採用・研修・配置施策のセットとして構成される二つのモデル、学歴主義モデルと平等主義モデルを提示する。

日本企業における仕事満足・賃金の構造変化の考察
~四半世紀の時代と世代の効果に着目して

大阪大学経営企画オフィス 岡嶋 裕子

90年代から20年以上にわたる日本経済の低迷期間,多くの日本企業で従業員の処遇管理方針が見直され,様々な形で賃金水準や昇給が抑制された。 年功序列型賃金・人事制度の維持が困難となり,「成果主義」人事制度が多くの企業で導入され,賃金格差が拡大したと言われるが,就労者の賃金や仕事の認識の実態はどうであろうか。 日本企業の従業員のアンケートデータを用いて賃金の水準や分布,仕事満足の実態について,時代および世代に着目し四半世紀の変遷を考察する。

個別組織における人事制度の決定要因
~QCA(質的比較分析)を用いた制度ロジックの影響分析を中心に~

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 アソシエート・パートナー 角 直紀

企業における人事制度は同型化の圧力を受けて普及しながら,個別組織においては異質性が確認される。 商業ロジックと福祉ロジックが競合するハイブリッド組織である在宅介護業界各社のコア人材の育成・確保に向けた人事制度の実態を, 質問紙調査とインタビュー調査によって明らかにし,「制度ロジック」の状況が各社の人事制度の多様性に影響を与えていることを,QCA(質的比較分析)の手法を用いて検証した。

企業の人事制度導入の要因に関する実証研究

大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程 藤井 英彦

各種人事制度導入検討に関する企業へのアンケート結果から、2段階プロビット・モデルを用いて、企業の人事制度導入の要因に関する実証研究を試みた。 その結果、企業業績や人材確保は各種制度導入検討に関与しない一方、能力開発や経営合理化施策の実施状況は各種制度導入検討に有意な影響を与えていることが明らかになった。 企業が今後人事施策を検討する上で参考となる知見が得られた。

日本企業における"スター社員"の先行要因
:人的資本,社会関係資本,心理的資本の観点から

神戸大学 服部 泰宏

要約: 本研究の目的は,企業のなかで平均をはるかに凌ぐ成果をあげるスター社員に注目し,スター社員の集合と高業績社員の集合との一致/不一致, スター社員の集合をそれ以外の社員の集合を分かつ要因とは何かということを明らかにすることにある。 日本企業14社全377名のサンプルを対象とした調査の結果明らかになったのは, (1)高業績社員とは基本的には別の集合であること,(2)スター社員とそれ以外の社員とを識別する要因は心理的資本である,ということである。

タレントマネジメントの実践に対する日本企業の意識の探索的分析1)

環太平洋大学経営学部 柿沼 英樹

要旨:日本企業におけるタレントマネジメントへの関心や実践の動向を捉えなおすために、日本語で公刊された文献資料の内容分析と、 人事部門を対象に行われた質問紙調査の再分析とを組み合わせた複眼的な議論を展開した。 その結果、文献にて散見されてきた「グローバル人事」や「全社員の底上げ」とは異なり、 実際には「適材適所」や「人材育成」を企図した枠組みとしてタレントマネジメントが解釈されている可能性などが示唆された。

タレントマネジメント施策への認知が組織・仕事への態度に与える影響についての研究

京都先端科学大学 田中 秀樹
独立行政法人労働政策研究・研修機構 西村 純

本研究ではタレントマネジメント(以下、TM)施策としての早期選抜が従業員の組織・仕事への態度に与える影響について検討を行った。 分析の結果、TM施策への認知は愛着的コミットメント及びワーク・エンゲージメント(以下、WE)を向上させる可能性が示唆された。 しかし、TM施策が導入されていても、従業員が自身は非選抜者である(=タレント人材ではない)と知覚している場合はWEを低減させる可能性も示唆された。

労働法の改定と労働組合の盛衰
-ニュージーランドの事例より-

専修大学 廣石 忠司
独立行政法人労働政策研究・研修機構 西村 純

労働法は企業の人事労務の現場に大きな影響を与えるが、逆に人事労務の現場の動きが労働立法に影響を与えるという相互作用が両者間にある。 本報告はニュージーランドにおける労使関係法の度々の改定と労使関係の現場との相互作用を概観し、労働立法が労働組合に与えた影響を指摘したうえで、 日本の労働組合が現在抱えている(あるいは抱えるであろう)問題として交渉力や闘争力の低下を指摘するものである。

教育機関における法令遵守とチェック機能
ハラスメント防止にむけて

北海商科大学 堤 悦子

大学は学術の中心として深い真理探究を行う機関であるという特性に着目して,教員に高度の信頼がおかれた。 大学の自治は死守されるべきだがマネジメントと最高意思決定機関として教授会の運用は別である。 日本は当初アメリカにおける大学の制度に倣ったのにハラスメント防止のための現在の取組み遅れている。 日本の大学のマネジメントは,こうした法令を真摯に遵守することを徹底し,自治監視機構を強化されることが望まれる。
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