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2025年全国大会 7月27日 報告要約

日本企業で働く高度外国人材と日本人上司の間に おける異文化シナジーを阻害する要因の解明

東京経済大学/法政大学大学院研究生・河瀬恵子
法政大学大学院・石山恒貴

要約:本研究の目的は、日本企業で働く高度外国人材1と日本人上司の間で生じる異文化シナジーを阻害する要因を検証することである。高度外国人材とその日本人上司各11名の調査内容をグレーザー派グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した結果、自らの視点が相手の視点と異なることへ双方が無自覚であることを意味する「視点取得のアンアウェアネス」というコア概念を抽出した。その結果、日本企業の実態は異文化シナジーの第1段階に到達していないことが明らかとなった。


上司・同僚による両立支援行動とワーク・ファミリー・コンフリクト、父親の子育てに関する探索的研究

大阪商業大学総合経営学部・大平剛士

要約:上司・同僚による両立支援行動(FSSB/FSCB)とワーク・ファミリー・コンフリクト(WFC)、父親の子育ての関係を探索的に分析した。未就学児の末子がいる会社員の父親158人による回帰分析の結果、FSSBはいずれの子育ての変数とも有意な関係は見られなかったが、FSCBは温かい応答性、攻撃性、コペアレンティング、家事の頻度と正の関係が確認できた。また、WFCは攻撃性とは正の関係が、温かい応答性やコペアレンティングとは負の関係が見られた。


裁量労働制適用者には何が必要か
上司行動と人事管理施策に着目して

兵庫県立大学・高階利徳
関西大学・森田雅也

要約:裁量労働制適用者562名を対象に質問票調査を行い、上司の行動と人事施策が適用者の心理にどのような影響を与えるのかを分析した。裁量労働制を望ましい形で運用していくには、適用者に対して、自分で仕事の始まりと終わりを決められる境界決定の自律性を保障すること、適正な仕事量の配分や処遇といった公正な人事管理を行うこと、信頼される上司行動を取ること、が必要であると結論付けられた。


取締役会における人事担当役員の存在とその成果に関する実証研究

株式会社日本政策投資銀行/早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程1・小澤彩子

要約:本研究の目的は、人事幹部の戦略的役割を実証的に検討することである。2008 年から2023 年までの日本の上場企業のパネルデータを用いて、取締役会におけるCHRO(Chief Human Resource Officer)などの人事担当役員の存在と企業の労働投資効率(Labor Investment Efficiency)との関係を調査した。分析の結果、取締役会に人事担当役員がいる企業は、経済のファンダメンタルズから予測される最適な雇用水準に近いレベルで従業員を雇用していることなどが確認された。


経時的な人事施策の柔軟性に関する実証研究

追手門学院大学・穴田貴大

要約:本研究の目的は,人事施策の変更と企業成果の関係に着目し,人事施策の調整的柔軟性の経時的な影響を明らかにすることである。日本企業のFWA施策に関するパネルデータを用いて,施策の水準,施策の変更,施策の変更程度が営業利益率および一人当たり営業利益といった企業成果に給える影響を分析した。結果,施策の水準と変更は企業成果を高めるが,施策の変更程度が急激な場合は,企業成果に結びつかず,持続的な施策変更と見直しの重要性が示唆された。


副業・兼業における労働時間管理のあり方に関する一考察

明海大学・雨夜 真規子

要約:副業・兼業をする際、労働基準法38条1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定しており、これは事業主を異にする場合をも含むと解されている。先般、「労働基準関係法制研究会」報告書では、本業と通算した労働時間が1日8時間・週40時間を超えた時に割増賃金を払う仕組みは廃止するものの、健康管理のために労働時間の通算管理自体は残すとする方向性を示したが、この通算管理には合理性がなく不要と結論付ける。


デジタル技術による経営革新とプロジェクトマネジメントの成功要因

京都橘大学経営学部・王嬌
京都女子大学データサイエンス学部・中田喜文

要約:デジタル技術の進展に伴い、企業のプロジェクトマネジメントの在り方も大きく変化している。特に、プロジェクトの成功には、デジタル技術を活用した適切なマネジメントアプローチの選択が不可欠である。本研究では、ソフトウェア開発プロジェクトを対象に、プロジェクトマネジメントの裁量的アプローチ・協働的アプローチと、各種プロジェクト成功指標との関係を分析する。


HR テクノロジーの導入が人的資源管理の合理性と熟達に給える影響について

株式会社Works Human Intelligence 飯田晃大
神戸大学 江夏幾多郎

要約:本研究では、HRテクノロジーがHRMにおける合理性と管理実践の熟達をどう再構築するかを探る。技術の合理性と制度的合理性は個別に存在するものではなく、HRテクノロジーを単なる効率化ツールではなく、組織の戦略的価値を形成する要素として機能させうる。HRMの合理性や管理実践の熟達は、テクノロジーにより一方的に促進または阻害されるのではなく、テクノロジーをめぐる関係者の相互作用を通じ、それらの意味自体が問い直される。


従業員の専門性とジョブ型雇用に関する一研究

神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程 1年 ・ 中谷 友香

要約:昨今、日本企業でジョブ型雇用が検討されている背景には、従業員の専門性の向上という論点が1つの契機である。従業員に高い専門性が要請される背後には、国際競争が激化し、競争に勝つうえで専門性の強化が不可欠であるとする、企業経営者の認識がある。本研究では、日本企業において真に必要なる専門性を「有機的専門性」、現下で喧伝されるジョブ型雇用において得られる専門性を「機械的専門性」と概念化し、両者間には概念上の乖離があることを主張する。


タスク変化の軌跡と規定要因
職歴データを用いたアプローチ

関西大学社会学部・瀬戸 健太郎

要約:本報告では、個人の職歴をライフコースの視点から、初職から現職まで再構成し、日本版O-NETの職業別数値情報を接続させることで、個人の技能や職務の軌跡がいかなる形状であり、どのように規定されているかを分析した。分析の結果、スキルやタスクの上がり方は、仕事競争モデルのような理論とは整合的でない部分があり、特に大企業/中小ブルーカラー層での上がり方が急である。これは、「正規従業員」として職業を超えて技能形成を行う日本の特徴とみなすことができる。


「職務」とは何か

長野大学企業情報学部 鈴木誠

要約:「職務」はその単価が外部労働市場で決まる職種にのみ通用する概念と一般的には考えられている。だが、日本の文脈で「職務」を捉えるならば次の3点が重要となる。①「職務」はいくつかの評価要素から構成されており、時代や環境によって変化している。②「職務」の定義は企業横断的なものとは限らず、むしろ日本では労使の検討・合意のもとに企業内部での共通理解を前提として形成されている。③「能力」の評価や「役割」の評価も「職務」の捉え方と密接に関わっている。


人事管理の実務家におけるリサーチ・プラクティス・ギャップの実態と背景
実務家への質問紙調査を通じて

神戸大学・江夏幾多郎
南山大学・余合淳
同志社大学・田中秀樹

要約:近年,海外を中心に経営における研究者と実務家の視点のずれや関わり合いに関する研究が進展している。本研究では、人事管理についての日本の実務家を対象とした質問紙調査を行い、学術と実務の双方に関する知識の実態に加え、その先行要因および影響について経験的に検討した。主な発見事実として、人事への天職意識が種々の知識への接触・造詣・重要性認識に影響すること、実務的知識への造詣と学術的知識への重要性認識が業務における創造性を促すこと、などが確認された。


人事制度の歪みにおける人事部の関与に関する研究
- 役割等級制度の導入および運用事例を通じて -

神戸大学大学院博士課程・穂積 慎一

要約:本研究は、職能資格制度から役割等級制度へ移行したグローバル製造業企業(X社)を対象とした事例研究である。制度検討プロセスおよび導入後の経年データを用いて、現場での運用における意図せざる結果が、本社人事部による制度導入までの対応に起因する「歪み」の要因を明らかにした。


人事制度の共創プロセス
‐人事部の行動と姿勢に着目して‐

北九州市立大学経済学部・丸子 敬仁

要約:本報告の目的は「人事制度をつくる過程」について、理論的・経験的分析を行い、詳細にすることである。より詳細に言うと、人事部が、人事制度の利用者である従業員とどのような相互行為をして、自社にとって有意味な人事制度をつくり出すのか、この過程(相互行為)を単一ケーススタディより明らかにする。


創造性を促進させる心理的資本の コンフィギュレーション
-看護師を対象としたfsQCAによる探索的研究-

和歌山大学・厨子直之
神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程・堂西晴香

要約:本発表の目的は、心理的資本の4つの次元(ホープ、エフィカシー、レジリエンス、オプティミズム)のどのような組み合わせが創造性を予測しうるのかについて、ファジー集合QCAを適用して探索的に明らかにすることである。大学病院に勤務する看護師146名のデータを用いて必要条件と十分条件の分析を行った結果、多次元構成的視座に立脚し、レジリエンスを基盤に、ホープとエフィカシー、またはホープとオプティミズムを高めていくことの重要性が示唆された。


製薬企業のPatient Centricity が医薬情報担当者の知識提供行動に給える影響

立命館大学・前川友裕
法政大学・古田克利

要約:製薬企業においてPatient Centricityの浸透が医薬情報担当者(MR)の知識提供行動に給える影響について、経営理念の浸透効果の視点から検討した。MR(n=314)を対象に調査・分析を行なった結果、Patient Centricityは患者への顧客志向を介し、知識提供行動に正の影響を与えていた。本結果は製薬企業がPatient Centricityを推進することについて、新たな価値を付与するものであると考えられる。また、理念の内容的側面を考慮した上でその浸透効果を評価することの意義が示唆された。
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