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2026年全国大会 8月30日 報告要約

地域資源を活用した新たなワーケーションの可能性
長野県信濃町における森林サービス事業の事例分析

神戸大学大学院研究員・四方 邦宗

要約:本稿の目的は、働く場所の多様化が進展するなかで、森林資源を活用したワーケーションがいかにして従来の従業員の福利厚生を超え、企業の人事労務施策として実装され得るのかを明らかにすることである。具体的には、森林サービス事業を組み込んだ先駆的事例である長野県信濃町を対象に、地域側と企業側の価値統合プロセスを分析し、新たな地方創生戦略としての「付加価値型人事施策」のあり方を検討する。

個人のウェルビーイングからチーム成果への接続プロセス
−Gioia メソッドによる質的研究−

神戸大学・堂西 晴香
神戸大学・庭本 佳子

要約:本研究の目的は,職場におけるウェルビーイングがチーム成果へと結びつくプロセスを質的に明らかにすることである。ウェルビーイング推進企業3社の経営者層およびプロジェクト実行者13名への半構造化インタビューを実施し,Gioiaメソッドにより分析した。その結果,主体的ウェルビーイングは個人の挑戦を促す推進力として,関係的ウェルビーイングはメンバー間の協働と一体感を支える基盤として機能し,両者の相互作用を通じてチーム成果が創出されることが明らかとなった。

Well-Being 経営における組織パラドックスの構造
−理念実装をめぐる持続的緊張と再帰的連鎖−

立教大学大学院研修生・芹澤 有子

要約:本研究は、Well-Being経営の理念実装過程における組織パラドックスの連鎖構造を明らかにする。 企業2社30名への調査をM-GTAにより分析した結果、経営層では理念と成果合理性、人事部門では制度利用の非対称性、管理職では部下支援と業績責任の二重拘束、一般社員では自己責任化と格差をめぐる緊張が析出された。これらは階層間を波及し、構造的両義性を循環的に再生産していた。本結果はWell-Being 経営が支援や成長機会であると同時に統制や負荷としても経験される動態を示す。

昇進の非金銭的インセンティブに関する実証研究

金沢学院大学・奥井 めぐみ

要約:昇進は昇給を伴うことから金銭的インセンティブとなる一方で,昇進による仕事内容の変化や企業内や社会的なステイタスの変化による非金銭的インセンティブともなりうる。本研究は,アンケート調査の個票を利用し,入社時から現在にかけての努力水準階差に昇進の金銭的・非金銭的インセンティブが与える影響を調べることを試みる。分析結果より,男女とも,1つ上の役職に昇進した場合の賃金変化の影響を取り除いても,昇進可能性が努力水準を高めることが示された。

大手総合商社における内部モビリティと選抜メカニズム
スロッティングとシグナリングの実証分析

静岡県立大学・上原 克仁
高千穂大学・大島 久幸

要約: 本研究は、日本的経営の象徴とされる「遅い選抜」論に対し、大手総合商社A社の37年間にわたる膨大な人事データを用いて実証的な再検討を加えるものである。Ray (2023) の理論をもとに、属性に基づく初期配置(スロッティング)と有力上司の下での可視化(シグナリング)という二つの概念を導入し、昇格格差が顕在化する以前に早期選抜がなされ、特定の学歴が有力部署への配属を導き、そこで獲得されるスポンサーシップが早期選抜の決定的なトリガーとなる構造を解明した。

働きがいを感じにくい20~30代の国家公務員に関する考察

内閣官房内閣人事局・今井 由紀子

要約:本稿では、20代前半までと比べて20代後半から30代の国家公務員の働きがいが低いという問題に関し、働きがいと関連のある要素について年代により構造が異なるのかどうかを分析した。その結果、どの年代においても働きがいに強く関連する要素の構造に大きな違いはなかった。むしろこれらの重要な項目に関して20代後半から30代の国家公務員の肯定的な実感が低いことに問題がある可能性がある。また、その他の要素において30代の職員に特有の働きがいに関連のあるものがみられた。

過度な公正性がもたらす逆機能
−「使えない上司」に対する許しの形成過程に着目して-

名古屋大学・犬塚 篤

要約:本論は,「使えない上司」による公正性の発揮が,部下の「許し」に及ぼす影響を検討した。1430 名の「使えない上司」をもつ部下を対象とした調査から,公正性は回避動機を低下させ,慈愛動機を高める一方で,報復動機には有意な影響を及ぼさないことが判明した。また,回避動機にはU字型,報復動機には閾値的な非線形関係が確認された。これらの結果は,公正性の効果が「過去(報復)―現在・近未来(回避)―将来(慈愛)」という時間軸によって分化する可能性を示唆する。

職場における時間調整ニーズの共有と上司への改善提案
従業員Voiceの観点から

上智大学・細萱 伸子

要約:本研究は、職場における時間調整問題を従業員Voiceの対象として位置づけ、上司への提案意向および提案行動の規定要因を検討した。2時点パネル調査データを用いた分析の結果、不満・問題認識は提案意向と関連する一方、実際の提案行動には制度確認・情報探索およびプロアクティブ性が関連していた。さらに、同僚資源、上司のVoice促進、提案チャネルの明確性は、主として意向形成段階に関わることが示唆された。

日本企業における経営理念共感の媒介効果の実証研究
上司の自律性支援・職務特性と従業員アウトカムの関係に着目して

同志社大学大学院博士後期課程・瀬山 暁夫

要約:本研究の目的は,日本企業における経営理念共感の媒介効果を検証することである。パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査 2025」(N=8,206)を用いた大規模データ分析の結果,経営理念共感は,上司の自律性支援および職務特性と,ワーク・エンゲイジメントおよび主観的ウェルビーイングの関係を媒介することが確認された。これらから,経営理念を重視する日本企業においては,経営理念への共感が自己決定理論の内面化プロセスを説明することが示唆された。

教育訓練を起点とした理念内在化と行動化の因果連鎖
−3年パネルデータによる実証分析

セイノーホールディングス株式会社・村木 広司
セイノーホールディングス株式会社・田口 義隆
富山大学・馬 駿

要約:本論文はS社の3年間のパネルデータを用い、教育訓練が理念内在化・行動化を介し成果・評価へ 至る因果連鎖を検証した。分析の結果、OJTは理念・社訓の定着に広く作用し、Off-JTは創造と革新を含む社訓意識に比較的強く関わっていた。また、顧客志向・職場協調・組織改善・自律的行動はいずれも仕 事成果を高めたが、人事評価に有意に結びついたのは自律的行動のみであった。以上より、教育訓練の効 果は理念・社訓の定着と行動を介して発揮され、OJTとOff-JTは補完的に機能することが示された。

イノベーションを促進するマネジメント要因・社員の行動様式に関する考察
−日本の上場企業を対象とした実証分析−

University of Wales Trinity Saint David・武田 行子

要約:本研究は、日本の上場企業勤務者784名を対象に、マネジメント要因および社員の行動様式が、探索型・深化型のイノベーション促進度および企業成果に関する主観的評価とどのように関連するかを検討した。分析の結果、社員の行動様式はマネジメント要因より高い説明力を示した。探索型では社外で通用する能力・目的意識・知見の組み合わせ・実験が、深化型では提案・胆力・目的意識・深い理解が主要な説明変数として抽出された。以上より、探索と深化では引き出すべき社員行動が異なり、両者を区別した人事労務管理の必要性が示唆された。

社会人大学院修了生の学びと実践
経験学習理論による事例分析

同志社大学・吉良 絵里

要約:社会人大学院修了生の学びが,入学前の職業経験を起点としてどのように形成され,修了後の実践へ展開するのかを検討する。自発的進学型5名,企業派遣型1名の計6名への半構造化インタビューを,Kolbの経験学習理論に基づき分析した。大学院での学びは,既有経験を省察し理論的に概念化する場として機能していた一方で,学びの実践は業務改善に限らず,判断の枠組み・他者理解・企画提案・キャリア選択として多様に現れていた。

キャリア観の変容と人材育成システムの再検討
−地方製造業における若手従業員のキャリア認識に着目して−

大正大学・大橋 重子

要約:本研究は,地方製造業の若手従業員が入社後の職場経験や人材育成過程を通じて形成するキャリア観を明らかにし,既存の人材育成システムとの関係を検討することを目的とする。インタビュー調査データをGTAを援用して分析した結果,昇進や役職獲得等の従来型ではなく,職場経験による成長実感,人間関係,生活との調和を重視するキャリア観を形成していた。本研究は,若手のキャリア観の変容を踏まえ,成長実感につながる職場経験を支える人材育成の重要性を示す。

若手社員は異質な参入者をいかに解釈し,いかに成長するのかに関する探索的研究
−中小企業2社との取り組みを手掛かりにして−

龍谷大学・太田 侑樹

要約:本研究は,他者を教育することとなった中小企業の若手社員の成長を動態的に論じたものである。既存研究の死角となっていた中小企業を対象にし,①文脈を共有していない異質な参入者か,②利害関係の無い関係性かという,若手社員の成長に寄与する二つの要因を導出できた点に本研究の新規性があり,理論的含意だといえる。また,採用候補者となる大学生の志望度向上の実態や,教育を担うことによる若手社員の成長をダイナミックに論じられた点が実践的含意である。

日本のインターンシップ研究における企業視点の体系的整理
−採用・人材育成・組織適応を貫く縦断的視座の構築に向けて−

神田外語大学・篠田 啓介
コー・イノベーション大学・今永典秀

要約:本論文は,日本のインターンシップ研究を企業視点から体系的に整理することを目的とし,スコーピングレビューの方法論に基づき実施する。本研究の理論的貢献は2点である。第一に,企業視点のインターンシップ研究を採用・人材育成・組織適応の枠組みのもとで整理し,研究蓄積の偏在を示すことにある。第二に,教育研究と人的資源管理論の架橋への一 歩として機能することにある。

再雇用終了後のライフスタイル形成プロセス
−アイデンティティの再体制化と分岐の視点から−

元法政大学大学院キャリアデザイン学研究科・山田 真稔

要約:本研究は、同一企業で定年後再雇用を経験し、65歳で再雇用を終了した者を対象に、ライフスタイルをどのように模索し、アイデンティティが再体制化していくのかを質的に検討した。M-GTAによる分析の結果、対象者は役割喪失や葛藤を経験しながらも現実を再意味づけし、「仕事の拡張」と「生活の拡張」という二方向へ展開していた。再雇用期は、生き方と自己を再構成する重要な移行期であることが示唆された。

職場におけるジョブ・クリープに関する質的検討

茨城大学・陳 青

要約:本研究は、職場において業務範囲が徐々に拡大していく現象であるジョブ・クリープのメカニズムを解明することを目的とする。従来の研究は、ジョブ・クリープを個人に悪影響を及ぼすものとして、個人視点から検討する傾向があった。しかし本研究では、個人と職場全体の関係に着目し、職場におけるジョブ・クリープはどのように生じるのか、あるいはどのようなものにもたらされるのかの2点からジョブ・クリープのメカニズムを検討した。

帰任者の知識移転はいかに組織適応と関係するのか
帰任後の初期段階におけるマルチタスクに着目した理論的検討

東海大学・内藤 陽子

要約:従業員移動の個人レベルの文献において、海外赴任からの帰任に関する研究は帰任者の知識移転と組織適応という2つの流れがあり、各分野から重要な知見が得られている。一方、帰任者は組織適応と知識移転を担うことが多いにもかかわらず、両者の関係は体系的に解明されていない。そこで本稿では、帰任者が移動後の初期段階において、知識移転と組織適応の遂行というマルチタスクを経験しやすいことに着目し、組織適応との関係を説明する帰任者の知識移転理論の構築を目的とする。

「活躍」の新しい定義と「活躍」できる要因
−IT技術職の場合

公益財団法人21世紀職業財団・山谷 真名

要約:長時間働ける人だけでなく、多様な人が自分の能力を十分に発揮するためには、長時間でないと務まらない働き方を変えることが必要である。そこで、「活躍」を「自分の力の発揮」&「持続可能な働き方をしている(Sustainable Work Style)」と定義した。多項ロジット回帰分析により、IT技術職の女性において、上司が所定時間内に勤務を終了している場合や昇格・昇進で性別による差がない場合等に「自分の力の発揮&SWS」の割合が高まることが明らかとなった。

女性のキャリア展望はなぜ低いのか
−学歴の緩和効果と組織的要因の影響−

日本福祉大学・藤井 英彦

要約:本研究は、企業のパネルデータを用い、大卒女性のキャリア展望の規定要因を実証分析した。分析の結果、キャリア展望は中途退職を有意に抑制し、大卒資格は女性のキャリア展望の低さを緩和して男女間格差を縮小させることが判明した。さらに Oaxaca 分解により、男女差は長時間労働や職能等級等の組織的要因に大きく依存しており、これらを考慮すると「説明できない差」はほぼ消失した。

法的保護の認知と性的マイノリティ当事者の仕事へのエンゲージメント
心理的安全性および非自発的アウティングのリスク知覚の役割

東北大学・閻 亜光

要約:本研究は、日本の職場で働く性的マイノリティ当事者を対象に、法的保護の認知が仕事へのエンゲージメントに与える影響を検討した。合計939名を対象とした調査を行い、心理的安全性の媒介効果とアウティングリスク知覚の調整効果を分析した。その結果、法的保護の認知は仕事へのエンゲージメントを高め、心理的安全性がその関係を部分的に媒介していた。一方で、アウティングリスク知覚による有意な調整効果は確認されなかったが、心理的安全性を低下させる直接効果が示された。

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