国際ビジネス研究学会 会長挨拶

会長就任のご挨拶

このたび、国際ビジネス研究学会の会長に選出されましたことを、大変光栄に存じます。同時に、その責任の重さを実感しております。本学会は、1994年の設立以来、日本最大の国際ビジネス研究の発展に寄与し、国内外の研究者や実務家との架け橋として、多くの実績を積み上げてまいりました。この30年間にわたり、本学会の基盤を築き上げてこられた会員の皆さまのご尽力に心より感謝申し上げます。

現在、国際社会はかつてないほど激しい変化の中にあります。デジタル経済の急速な進展とAI技術の飛躍的発展、地政学的リスクの高まり、コロナなどのレアイベントの頻出、持続可能性に関する取り組みの加速、GAFAMなどの巨大企業の台頭など、大きな潮流が国際ビジネスの新しい姿を形作りつつあります。これらの潮流がもたらす課題と機会に適応し、さらなる知識の創出を目指すことが、私たち学会の使命であると考えております。

前会長である新宅純二郎先生は、学会運営において数多くの新な試みを導入されました。それらの試みの多くは、現在も学会活動における重要な指針となっております。私はその流れを引き継ぎ、更なる発展を遂げるべく、以下の4つの領域において学会活動を推進してまいります。

1. 世界とつながる研究発信:日本から国際社会への架け橋 国際ビジネスは本質的にグローバルな学問分野であり、研究成果を世界に向けて発信することは、学会としての重要な役割の一つです。そのために、海外学会との連携をさらに強化し、研究成果の国際的な発信を推進いたします。また、海外の優れた研究者が本学会に参加し、成果を発表する機会を増やすことで、相互の知的交流を促進します。このような活動は、日本発の国際ビジネス研究を世界に広めるだけでなく、海外の新しい知見を取り入れ、国内の研究にフィードバックする役割を果たします。具体的には、国際学会との合同セッションやワークショップの開催、さらに国際ジャーナルへの特集号掲載の実現を目指すなど、日本の研究者が世界で活躍できる環境を整えてまいります。

2. 地域発の知見で築く多様性:地方から始まる国際ビジネス研究 一方で、地方に根ざした研究者の活動を支援することも学会の重要な使命です。日本各地の地方部会を活性化し、地域に根ざした国際ビジネス研究を創出していきます。地域ごとに異なるビジネスの課題やチャンスを明らかにすることは、国際ビジネス研究の多様性を深めるだけでなく、地域社会への貢献にもつながります。たとえば、地方部会を中心とした研究フォーラムやワークショップを開催し、地域独自の視点から得られた知見を全国に発信する機会を増やします。また、地域研究者と企業との連携を促進し、実務との協働による実践的な研究成果を追求してまいります。

3. 会員間のつながりを強化する:協働で未来を創る学会活動 学会活動の根幹を成すのは、会員同士の交流です。そのため、学会内での協働を促進する仕組みをさらに強化していきます。具体的には、学会内にゼミ形式の小グループを設け、特定のテーマに関心を持つ会員が定期的に集まり議論する場を提供します。このような活動を通じて、会員同士がより深くつながり、研究の質が向上することを目指します。また、若手研究者の育成にも力を入れます。大学院生や若手研究者向けのメンタリングプログラムを実施し、経験豊富な研究者と直接対話する機会を提供します。これにより、次世代の国際ビジネス研究者がスムーズに成長できる環境を整えます。

4. デジタル時代の学会発信:広がるオンラインの可能性 近年、デジタル技術の進展により、研究成果を発信する手段が大きく変化しています。本学会でも、オンラインプラットフォームを活用し、動画アーカイブを通じて学会発表の内容を記録・共有する取り組みを強化してまいります。これにより、学会に参加できなかった会員や広く一般の研究者に対しても、研究成果を届ける機会を拡大します。さらに、学会誌「国際ビジネス研究」をデジタル誌として生まれ変わらせる計画を進めております。この取り組みにより、印刷や発送に伴うコスト削減と環境負荷の軽減を図るだけでなく、より多くの読者に迅速かつ広くアクセス可能な形で研究成果を提供できるようになります。これらの取り組みを通じて、学会の活動をデジタル時代に適応させると同時に、社会全体に対する影響力を高めてまいります。

これら4つの取り組みは、それぞれ独立しているだけでなく、相互に補完し合いながら学会全体の活動を支えます。私はこれらの目標を達成するために、皆さまのご意見を積極的に取り入れ、会員全員が誇りを持てる学会づくりを進めてまいります。 本学会が引き続き国際ビジネス分野における日本を代表する学術団体として国内外で存在感を高められるよう、力を尽くす所存です。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2025年1月

会長 牧野成史(京都大学)



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