2022年全国大会 7月10日 報告要約
日本企業のダイバーシティマネジメントにおける新たな着目点と提言
〜概念・実態の検討を通して〜
立命館大学大学院 経営学研究科 博士課程後期課程 二回生・閻 亜光(YAN YAGUANG)要約:ダイバーシティマネジメントの変化を皮切りに日本企業におけるダイバーシティマネジメントの定義と変遷を整理した。 また、日本企業のダイバーシティマネジメントを考察し、ダイバーシティマネジメントの捉え方を三つの視点で新たに分類した。 さらに、今後の日本企業におけるダイバーシティマネジメントをどのように行うかを再考し、 望ましいダイバーシティマネジメントを実施する際に考えられるオリジナルモデルも提案した。
国籍ダイバーシティと職務モチベーションの関係について(1)
筑波学院大学・徐 毅菁要約:⽇本における外国⼈労働者の数は年々増加する結果、従業員もより頻繁に国籍ダイバーシティに遭遇するようになった。 そこで本研究は、ホワイトカラー従業員を対象に、 国籍D とモチベーションの関係性を再度検証し、そのマイナス影響を緩和できる組織的変数の模索を⽬的とする。 具体的に、先⾏研究レビューのもと、定性的調査を⾏い、理論モデルを構築し、さらに定量的⼿法でその真偽を検証する。
外国人雇用をめぐる制度運用ロジックの複数性
人材戦略からみる2 つの外国人雇用とその交差点
日本学術振興会 特別研究員(PD)・園田薫要約:企業における外国人雇用の意義づけは、タレントマネジメントとダイバーシティ・マネジメントという2つの 人材戦略によって理論的になされているが、 実際に日本企業が外国人をどのような論理において雇用しているのかは実証的に検討されていない。 インタビュー調査の結果、両者の論理は異なる外国人像を意識して併用されるが、 日本で働く正社員に対しては、その両者の制度運用ロジックが重なって現れることが明らかになった。
女性活躍推進と企業業績に関する分析
-登用比が与える影響に注目して-
関西学院大学・車田絵里子金沢学院大学・奥井めぐみ
関西学院大学・大内章子
要約:本研究では、「女性の活躍推進企業データベース」と企業財務データとを合わせ、 企業の女性活躍推進が業績に与える影響を分析した。 企業の女性活用指標として、女性管理職比率、および管理職の男女比を従業員の男女比で除した「登用比」を用いた。 サンプル・セレクション・バイアスに対処した分析の結果、登用比は全要素生産性に対して正の影響を与えるが、 総資産利益率に対する有意性は低いことが示された。
新卒女子学生採用比率の決定要因
愛知学院大学経済学部・武内真美子要約:本稿では2019年度の大企業を中心とした企業個票データを使用して、 新卒の女子学生採用比率に影響を与える要因を考察した。 複数の指標を被説明変数とした分析の結果、労働組合の存在、障害者雇用率、人材の多様性に対する取り組み、 くるみんマーク取得、研究開発費は正の効果を持つ傾向にある一方で、女性従業員の勤続年数、海外勤務者比率、 成果主義の導入は負の効果を持つ傾向を確認した。
仕事配分と人事評価の納得や意欲
-男性の育休取得が仕事配分と人事評価に与える影響-
関西学院大学・大内章子甲南大学・奥野明子
金沢学院大学・奥井めぐみ
要約:本研究の目的は、男性の育休取得が復職後の仕事配分に与える影響と、さらにそれが人事評価に与える影響を、 非取得者との比較によって明らかにすることである。 分析の結果、男性については育休取得そのものが復職後の人事評価に直接的な影響を与えないこと、 復職後に成長につながる仕事が配分されていれば人事評価が高いことが明らかになった。男性の育休取得の多くが1 ヶ月未満の短期間であることに注意が必要である。
生産性に関する学習と賃金のダイナミクス
山口大学経済学部・川村一真要約:努力の生産性に関する不確実性を導入した繰り返しエージェンシーモデルを検討し, 時間を通じた生産性の学習に応じて最適契約がどのように変化するのか明らかにした。 生産性の不確実性は従業員にとって、賃金リスクの原因となるため,それが大きい状況では基本給は高い。 事業の年齢が長いと経験が蓄積され,生産性の学習が進み,不確実性が縮小する。 それゆえ基本給は低くなると考えられる。この仮説を,鐘淵紡績株式会社(以下鐘紡)のデータを用いて検証したが支持されなかった。
派遣の同一労働同一賃金におけるネジレ
連合総合生活開発研究所・中村天江要約:派遣の同一労働同一賃金では想定外の事態が起きている。 例えば、派遣労働者の賃金が増えているのは、例外とみなされている「労使協定方式」を選び、 労働組合ではなく派遣労働者が過半数代表者として労使協定を締結している派遣元である。 派遣労働者、派遣先、派遣事業者の三者関係では、伝統的な労使二者関係の枠組みが通用しないのである。 派遣の政策形成では、EBPМの積極実施と政策形成プロセスの整備が必要である。
処遇決定基準の違いと従業員編成に関する一考察
-2010 年代の百貨店の事例から-
労働政策研究・研修機構 野村かすみ要約:2009 年から2013 年にかけて行った百貨店2社のヒヤリング調査結果の事例から企業の従業員編成に関するルールと 実際の運用を考察する。従業員編成に関しては、営業利益確保の難しさなど財務的要因や立地など経営環境の要因により 要員数の確保が困難な場合があるが、企業は柔軟な人材活用により効率化を模索している。 本稿は、職能資格制度、職務等級制度を採用する各社の従業員編成と人材活用の実態について考察している。
部長の仕事の類型化とその特徴
4つの部長役割に基づく検討
法政大学・坂爪洋美大学院大学至善館・吉川克彦
中央大学大学院・高村静
要約:本研究では部長の仕事を、部門の現在ならびに未来の両方を視野に、 対個人と仕組みづくりの両方に働きかけを行うという4つの役割で構成される幅広い仕事と捉え、その特徴を検討した。 本部長クラスを含む部長1339名を対象とした分析からは、 4つの役割全てを一定水準以上担う部長が73.8%と4分の3近く存在すること、 同じ部長の中でも職位の違いにより仕事の軸足の置き方に違いがあることが明らかになった。
あらまほしき部長はどのような環境下で育つのか
部長役割の4因子モデルに基づく登用基準、育成施策の検討
大学院大学至善館・吉川克彦法政大学・坂爪洋美
中央大学大学院・高村静
要約:現在の業績を追求し、部下に直接働きかけるだけでなく、事業の未来を描き、 組織の仕組みを作っていく役割行動を示す部長は、どのように輩出されるのだろうか。 本研究では経験学習理論及び、タレントマネジメント研究に立脚し、調査・分析を行なった。 サーベイへの回答(n=1339)の重回帰分析からは、部長を課長の延長線上としてではなく、 事業経営の当事者・予備群として捉え育成・登用を行うこと、また、部長登用前と後で有効な施策が異なることが示された。