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2023年全国大会 6月18日 報告要約

大学生のキャリア意識への影響要因に関する実証分析

富山大学経済学研究科・孫皓楠

要約:本論文は、大学生のキャリア意識と企業に期待されるキャリア形成との間にギャップという問題を意識しながら、「大学生のキャリア意識調査(2019 年)」の個票データを用いて、大学生のキャリア意識への影響要因、とりわけ大学生の性格や大学での授業態度などが彼(彼女)らのキャリア意識に与える影響について分析を行うものである。

技能形成パターンとその軌跡
―時期別仕事経験における幅と深さに着目して―

立教大学・瀬戸健太郎
法政大学・梅崎修

要約:本報告の目的は、技能形成の分岐パターン(軌跡)の類型化を通じて、その特徴の記述と、各類型への割当要因を解明することにある。分析の結果、30代で特定の職能での業務難易度を上昇させることが大きな分岐となっている可能性が高いこと、このような技能形成パターンへの割り当ては、仕事競争モデルによる解釈が整合的であることを、全国データを用いて実証的に明らかにした。

リモートワークと革新的仕事行動の関係
対面業務に関する心理的風土の調整効果

明治学院大学・林祥平

要約:本研究は職場の対面業務を重視する風土がリモートワークをする従業員の態度・行動に如何なる影響を及ぼすのかを検討するものである。具体的には、従業員の知識共有行動が革新的仕事行動に結びつくという関係に、風土知覚とリモートワーク頻度が与える影響について調査・分析した。その結果、対面風土を強く知覚する人がリモートワークをするほど革新的仕事行動が促されるが、風土知覚が弱い人ほど知識共有行動が促されるという結果が得られた。

父親の働き方と子育てや家事への関与
労働・通勤時間やテレワークの実施に関する探索的分析

大阪商業大学総合経営学部・大平剛士

要約:本研究の目的は、父親の働き方と子育てや家事への関与の関係を探索的に分析することである。内閣府男女共同参画局が 2020年に実施した調査の父親 278人のデータを用いて分析した主な結果として、労働・通勤時間は仕事がある日の家事・育児時間や、様々な項目の家事・育児頻度、本人の家事・育児の分担割合との間に有意な負の相関があった。テレワークの実施は一部の項目の家事の頻度や保育所関連の育児頻度、本人の家事の分担割合との間に有意な正の相関があった。

在宅勤務における孤立感の先行要因
知識共有,仕事からのフィードバックおよび職務自由度の効果

関西大学・細見正樹

要約:コロナ禍を機に在宅勤務の利用が増えたが、在宅勤務は孤立感などのネガティブな効果が生じる。このため本研究では、在宅勤務利用に伴う孤立感の先行要因を研究した。仮説検証のため、複数回在宅勤務者を対象にオンラインによる質問紙調査を実施し、分析した。階層的重回帰分析の結果、知識共有および職務自由度は孤立感に有意な負の効果を与えた。また、仕事からのフィードバックと職務自由度は、それぞれ知識共有と孤立感の負の関係性を強めた。

コロナ前後従業員帰属傾向の比較

東洋大学経営学部・徐 毅菁

要約:ネガティブな遂行結果に対する個人の原因帰属行動はその後の行動に大きく影響する。その帰属行動における個体差、換言すれば帰属傾向を 1 種の個人属性として捉えることができる。一方、帰属傾向の規定要因に着目する研究が多いなか、帰属傾向の可変性そのものに焦点を当てるものは殆どなかった。そこで本研究は、コロナ前後のホワイトカラー従業員を対象とする調査の比較を通じ、外部環境が大きく変化した場合に個人の帰属傾向の可変性を定量的に検証する。

就職氷河期世代支援プラグラムに関する実証分析

愛知学院大学経済学部・武内真美子

要約:本研究は2015年から2021年の7年間のパネル調査を使用し、2020 年度から実施されている就職氷河期世代支援プログラムの効果を試験的に検証した。分析は非線形モデルによる差分の差分(Difference-in-differences:DID)モデルなどを使用した。学歴男女別、産業・職業・企業規模別などの分析の結果、プログラムの効果は限定的である可能性が示唆された。

職務満足の要因の持続性に関する実証分析

日本福祉大学 経済学部・藤井英彦

要約:本稿では、職務満足の要因の効果が持続する期間についてパネルデータを用いて分析を行った。基本的心理欲求理論における自律性、有能さ、関係性という変数を用いて分析を行った結果、自律性は従業員の職務満足に短期的な影響を与えるのに対して、有能さは従業員の職務満足に長期的な影響を与えることが明らかになった。関係性は一貫した結果が得られなかった。これらの結果から、従業員の職務満足を高める施策として能力開発への長期的な取り組みの重要性が示された。

中途採用施策の水平適合が採用成果に及ぼす影響
―多様な採用成果に着目してー

東京都立大学大学院 経営学研究科・千葉純平

要約:SHRM 研究では HPWS のように HRM 施策を束として捉え、組織パフォーマンスとの関係を検証してきた。しかし、HRM のサブシステムのひとつに注目し、そのシステム内部での適合についての研究はあまり見られない。そこで本研究では人事機能のサブシステムのひとつである「中途採用」をテーマに、採用施策の水平適合(束)が「採用人数、採用期間、採用の質」に与える影響について分析した。結果として、「採用期間、採用の質」を向上させる中途採用施策の束を確認することができた。

ポリテクセンターはスキルセンターの役割を担うのか
システム・ユニット訓練の運営と5つのキー概念に注目して

同志社大学大学院 社会学研究科 博士後期課程・霜永智弘

要約:我が国の公的職業訓練は企業ニーズを満たさず、それを管理するスキルセンターも存在しないという。だが果たして,それは本当なのかを検証すべく、本研究では,、職業能力開発促進センター(以下、ポリテクセンター) A と B に聞き取り調査を行った。ポリテクセンターの離職者訓練は、企業ニーズを満たすシステム・ユニット訓練を行いスキルセンターの役割を担う。その役割は, (1)市場調査、(2)訓練計画案と競合調査、(3)訓練計画専門部会と運営協議会、(4)離職者訓練委員会、 (5)総合点検で説明される。

デザイン思考(エンパシー)を取り入れた授業デザインが学生の就職活動に関する意識に与える影響 採用”する”側になりきる力(エンパシー)が不安を軽減させる

芝浦工業大学・加藤恭子

要約:所属学科の 3 年生向けの「キャリア・デザイン」では、2021 年より産学協働体制のもと、エンパシー(empathy)の考え方を用いることで、相手(=企業)の立場をより深く理解することができ、結果として面接への不安が軽減するという仮説をベースに、学生が「企業の採用担当者役」と「就活生役」になりきり、ロールプレイング形式で模擬面接を行っている。学生は採用担当者になりきって「なぜ採用するのか」「誰を採用するべきなのか」を考えることで、就職活動の本質を掴むことができるようになり、それを就職活動をする側の自身の立場に反映させることができる。授業の開始前と終了後に実施したアンケートでは、準備や面接、サポート等、就活に関する多くの「不安」が減少していることがわかった。記述回答においても、採用担当者の立場を経験することで、自分の企業分析の浅さや視野の狭さに、エントリーシートの見方、質問の作り方や答え方を通じて、本質的なレベルで就職活動を理解できるようになっていることが見て取れた。

ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた 職場環境づくりの取り組み
―従業員の職場満足度の視点から―

富山大学・劉玉琪

要約:本論文は、「全国就業実態パネル調査」のデータを用い、企業の職場環境づくりが従業員の満足度、さらにワーク・ライフ・バランスに与える影響について分析し、従業員に職場満足度を向上させると同時に、個々人のワーク・ライフ・バランスストレスも解消できるような職場環境づくりに関する課題を明らかにしようとするものである。

日本企業における女性総合職のインクルージョン認識に管理者行動が与える影響
―インクルーシブ・リーダーシップの尺度開発に向けた予備的検討―

大手前大学経営学部・北村雅昭
大阪経済大学経営学部・船越多枝
大手前大学現代社会学部・平野光俊

要約:本研究の目的は、日本企業で働く女性総合職のインクルージョン認識に影響を与える管理者行動を明らかにし、女性総合職のさらなる活躍推進に資することである。日本企業で働く30歳以上の女性総合職19名を対象に半構造化インタビューを行った結果、管理者のインクルーシブ・リーダーシップを構成する次元として、職場全員との良好な関係の維持、質量両面で豊かなコミュニケーション、女性に対する公正さ、仕事に対する支援と承認、自分らしさ発揮の支援という5次元が抽出された。

労使関係の変遷から考察する労働組合の役割
特に大学の教職員組合に関して

北海商科大学教授・堤悦子

要約:私立大学の教職員組合は、根本法理である民主主義の実現と労働者である教職員の労働環境をよくするために、真摯な努力がなされることが要請される。特に少子化による全入時代は、大学紛争とは異なる教育を行うという難しい環境に教員は直面している。そうした中で経営が傾くと、マネジメントサイドに組合がおもねる例があった。軋轢回避は楽に思えるが、大学はもともと収益機関ではなく、組合組織もその教育者を支える公益的存在であり、積極的な教員への支援が望まれる。

企業別労働組合の内部変革に関する理論的考察

連合総合生活開発研究所・中村 天江

要約:「組合離れ」が深刻なため、労働組合の活性化に関する研究をレビューし、4つの要点を抽出した。第一に参加を促す決定的要因は組合成果である。第二にダイバーシティの進展により、組合成果をあげにくくなっている。第三に戦略転換の要は組合リーダーだが、イニシアチブを発揮できない構造がある。第四に戦略転換のためには組合内部の意思決定に着目する必要がある。企業別労働組合は企業組織であると同時に運動体でもあるが、前者の視点での知見が少なく、研究が期待される。

高度専門人材と労働組合
―情報通信 A 社の事例研究―

中央大学商学部・西村純
労働政策研究・研修機構・前浦穂高

要約:新たな市場開拓に必要な「高度専門人材」に対して組合は発言しているのだろうか情報通信A社を対象に、「高度専門人材」の確保のために導入された人事制度において実施された労使交渉について調査を実施した。調査より、組合は発言を通じて、①総合職と「高度専門人材」の均衡処遇の実現に寄与していたこと、また、②一般社員層の段階から総合職と「高度専門人材」の転換ルートを確立するなど、組織内キャリアの多様化にも寄与していることが明らかとなった。
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