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2024年全国大会 6月30日 報告要約

人手不足と非正規雇用 br なぜ正社員不足を非正規雇用で代替するのか

労働政策研究・研修機構・森山智彦

要約:本研究は、人手不足が正社員と非正社員の賃金格差に与える影響を分析した。その結果、パートタイマーと派遣労働者は、正社員を確保できないために非正社員を活用している事業所の方が、非正社員の賃金が高く且つ正社員の賃金が低いために、雇用形態間の賃金格差が小さかった。他方、正社員を確保できないために活用している契約社員を活用している事業所では、契約社員も正社員も賃金が低いが、特に契約社員の賃金の低さが顕著なために、正社員との賃金格差が大きかった。


フリーランスの法的地位と今後の企業活用・保護のあり方

KKM 法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会・ 倉重公太朗

要約:雇用によらない働き方の選択肢が広がる中、我が国におけるフリーランスの法的位置づけは「労働者」であるか、労働法の規律を受けない「就業者」であるか。「労働者」性解釈を拡大して保護の裾野を広げるアプローチには自ずと限界がある。そこで、本稿ではフリーランス新法制定後、どのような点に保護がなされ、どのような保護が足りないのか、そして企業はどう活用すべきかについて現行法の解釈論及び立法論の視点から検討するものである。


個別労使交渉・協議の現実 A 労組の取り組みから労組活動の活路を探る

j.union 株式会社・西尾 力

要約:日本の労組は、能力主義管理(人事考課)を容認して、賃金・労働条件の個人処遇化に道を開いている。にもかかわらず、賃金・労働条件の個人処遇化の現場での活動(個別的労使関係での分権的組合活動)を怠ってきた。本稿は、成果主義への転換に対抗して、目標管理・人事考課制度の各面談を個別労使交渉・協議の現場(労働者一人ひとりの発言や決定参加の機会や場の確保と実行)に替えて、職場での規制力を発揮している先進的労組の活動と、その成果の事例報告である。


人的資本経営がもたらす投資家コミュニケーションの変化
有価証券報告書「事業の状況」のテキスト分析

流通科学大学 商学部・柿沼 英樹

要約:「人的資本経営」という言葉の普及に呼応して、企業と利害関係者とのコミュニケーション機会における人事管理への言及がどのように変化しているのかを検討した。215 社・4 決算期の有価証券 報告書の定性的記述を対象としたテキスト分析の結果、人的資本経営の普及以前から人事管理に関する言及を行う企業が一定数存在すること、全体的な傾向として人事管理への言及量が増加していることなどが確認された。この結果をもとに、今後の研究の展開可能性について論じる。


バイオ研究領域のラボオートメーションと仕事の高度化

大阪大学大学院工学研究科 特任研究員・桑原寿江
労働政策研究・研修機構 研究員・小松恭子
高松大学経営学部 教授/大阪大学大学院工学研究科特任教授・ 松繁寿和

要約:本研究は、バイオ研究領域で進みつつあるオートメーション化に注目し、新テクノロジーの導入過程で起きる業務変化を観察した。バイオ研究領域においても、これまで手作業で行われていたものが高性能かつマルチタスクが可能な機器の開発と導入が進んでいる。この影響を捉えるために、作業を詳細に分解し各過程で必要とされる技能難易度をレベル化した上で、どのような業務が代替されるか、どの領域に変化が起きるか、さらに新たに必要となる人材と育成方向について検討する。


DX 導入に向けた組織体制および人的布陣の事例

高松大学・松繁 寿和
摂南大学・平尾 智隆
京都先端科学大学・岡嶋 裕子

要約:日本経済全体でDX が進む中、他産業と比較して自動化・省人化が遅れて労働集約型産業からの脱却が課題とされている食品製造業に注目し、アーリーアダプターの例を取り上げ、推進体制と推進する人材の特徴を探る。聞き取り調査と人事マイクロデータの統計分析から、DX を推進する人材は、平均年齢が若く、高学歴で中でも理系出身者が多いこと、ただし、全社的な経験と視野を持っていることや所属部門に偏りがあることを明らかにする。


コロナ禍における職場でのメンタルヘルスの因子分析及び考察
―性的マイノリティ当事者を対象として―

日本文理大学 経営経済学科 助教・閻亜光

要約:本研究は、コロナ禍における性的マイノリティ当事者の職場でのメンタルヘルスの影響因子を明らかにすることが目的である。日本企業で働く性的マイノリティ当事者を対象とし、探索的因子分析および重回帰分析を行った結果、計4つの性的マイノリティ当事者の職場でのメンタルヘルスの影響因子が得られた。また、メンタルヘルスに影響を与える因子を踏まえ、職場での改善方法を提案した。


休職者の復職や再就職までの軌跡 精神的健康・身体的健康

東京大学・百瀬由璃絵

要約:本研究では、健康上の理由で休職した従業員の復職や再就職までのプロセスを記述した。その結果、復職や再就職した人々と、退職または休職を継続した人々では、休職期間や失業期間に大きな差があった。また、精神的理由による休職者は休職期間が長く、身体的理由による休職者は失業期間が長いことが明らかとなった。さらに、休職後に退職して再就職した場合、休職前よりも良い労働環境へ移行する傾向にあることが判明し、良い労働環境が再就職の実現に寄与することが示唆された。


転職希望者の職業選択における曖昧さ対処のプロセス
意思決定の二重プロセス理論モデルに基づく検討

京都文教大学・中嶌 剛

要約:キャリア意思決定における混乱の軽減に関するパーソニアンの枠組みと曖昧さの受け入れを組み込んだ、意思決定の二重プロセス理論モデルの枠組みに基づき、20~40 代の就業者 500 名の不確実 性への適応行動と意思決定の結果との関連について包括的検討を行った。曖昧さへの回避が不適切な場合、キャリア意思決定に関するネガティブな結果を招くリスクが高まる反面、曖昧さに対する包含の効果により脅威が軽減し、選択不安やコミットメント不安を低下させる効果が認められた。


技術者のキャリアの多様性と自己評価との関係
WEB アンケートデータの試行的分析

北九州市立大学大学院マネジメント研究科・鳥取部 真己

要約:技術者にとって、専門技術を中心とした多様性のないキャリアか、それとも多様な経験に富むキャリアを歩むのが望ましいのか、そもそも技術者にとって重要になるキャリア上の経験はあるのだ ろうか。WEB アンケート結果からの試行的な分析は、多様な経験は創造的な成果にまつわる自己評価を高める可能性を示唆するものの、本研究で注目した 9つの経験のなかで創造的な成果にまつわる自己評価に影響を与えるのは、要素技術と全体設計とのジョブ・ローテーション経験のみであった。


高学歴者の賃金プレミアム -アジア 9 か国の比較研究

愛知学院大学経済学部・武内真美子

要約:本研究は、2019 年と 2022 年のアジア 9 か国主要都市の労働者の調査を使用して、 高学歴労働者の賃金プレミアムを比較検証した。結果、賃金プレミアムの一部は、大学・ 大学院卒業者が属する大企業、管理職、産業などの賃金の上昇分で説明できた。また、男 性と比較して高学歴女性のほうが 2022 年にコロナ禍の影響を受けている可能性が確認で きた。大学院学位取得者比率が高いインドは、頑強なプレミアムが確認できなかった。


勤務地限定正社員のワーク・エンゲイジメントを 規定する職場マネジメント
-JD-R モデルに基づく独自データの定量分析-

国士舘大学・平本 奈央子

要約:本稿では JD-R モデルを理論的枠組みとして、勤務地限定正社員の WE を高める職場のマネジメント要因について、仕事の資源のレベルに基づいて検討を行った。その結果、勤務地限定正社員のワーク・エンゲイジメントを高めるには、技能の多様性および成長の機会が重要であり、さらに成長の機会による効果をタスクの相互依存性が助長することが確認された。また、役割の明確さの影響は、 勤務地限定正社員に特有のコンテクストに大きく依存する可能性が見出された。


ワーク・ライフ・バランスと従業員態度に関する研究

九州大学経済学研究院・岸野早希
南山大学経営学部・余合淳

要約:本論文では、ワーク・ライフ・バランスの機能に着目し、その効果に関して個人属性に着目して理論的・実証的に分析した。ワーク・ライフ・コンフリクト(WLC)、ワーク・ライフ・ファシリテ ーション(WLF)、上司の家族支援的行動(FSSB)及び境界自律性を独立変数とする定量的分析の結 果、正社員の態度との正の関係性が確認され、更にその効果は個人属性(子どもの有無や年齢)に依 存する交互作用効果が確認された。


男性の短時間勤務に関する研究

甲南大学・奥野明子
関西学院大学・大内章子
金沢学院大学・奥井めぐみ

要約:本研究の目的は、男性が育児のための短時間勤務(以下、育短とする)を取得する要因と、男性の育短取得による人事評価への影響を明らかにすることである。育短を取得した男性(208 名)と、しなかった男性(906 名)を比較した結果、育休を長く取得した人ほど、また育休を取得した男性が多い職場ほど、育短を取得していた。また人事評価の高い人が育短を取得しており、育短取得および育短取得月数は人事評価に対して影響を与えていなかった。


リモートワークは人的資本投資をどう変えるのか?

国立社会保障・人口問題研究所・茂木洋之
早稲田大学・及川雅斗

要約:本論文はリモートワーク(WFH)が雇用者の人的資本投資(OJT、Off-JT、Self-learning、そして様々なリスキリング)に与える影響を分析した。WFH 実施の内生性を考慮するために、WFH 制度適用 の有無と COVID19 のマクロショックの外生的な変動を IV として識別した。結果として WFH は自己学習やオンラインによる学習を増加させ、対面の学習を減少させることがわかった。この効果は子供を持つ労働者と非正規雇用者にとって、特に大きいことがわかった。


ハイブリッドワークにおける管理職のマネジメント
生産性向上と部下育成に向けた対応

東京大学名誉教授・佐藤博樹
法政大学キャリアデザイン学部教授・松浦民恵

要約:本稿では、出勤とリモートワークを併用するハイブリッドワーク下にある管理職と一般社員を対象としたインタビュー調査に基づいて、以下の 2 点を分析する。第 1 は、リモートワーク時における生産性に影響する要因に関して、対象者のプロフィールや働き方、職種、在宅での就業環境、境界 管理、情報共有のあり方などを取り上げて考察する。第 2 は、ハイブリッドワーク下の職場における業務や、部下のスキルレベルや行動特性に応じた管理職のマネジメントの課題を検討する。


分散型ワークに適合的なマネジメント行動に関する研究

中央大学大学院・高村静
法政大学・梅崎修

要約:本研究の目的は、働く場所の選択を個人に委ね分散して働くこと(分散型ワーク)により業務を遂行するチームのパフォーマンスに影響を与える管理職のマネジメント行動を明らかにすることである。データ分析の結果、管理職のチーム内コミュニケーション・デザインとして2つのタイプが、リーダーシップ行動として仕事管理、配慮、交渉、部下育成、場の設計の5つが抽出され、個人と組織の成果(個人の主体的仕事行動、チームの探索活動、チームバイタリティ)への影響が見られた。
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